通常の食事をしていたら糖尿病になってしまう

特定健診で検出される血糖値の基準は、ヘモグロビンA1C 5.2% です。この数値、いくら予防のためとはいえ厳しすぎると思いませんか。私は、各地の自治体から依頼されて、特定健診のデータをとりまとめています。

そのたくさんのデータを見ると、受診者のヘモグロビンA1C の平均値は 5.2 % 前後の地域が多いのです。つまり、健診を受けた人の約半数は、ヘモグロビンA1C が 5.2 % を超えているのです。これではいくらなんでも、基準として厳しすぎるのではないか。当初私は、勝手にそう思い込んでいました。しかし、尊敬する糖尿病専門のある医師のひと言で、目が覚めました。

「よけいに食べたり飲んだりせず、腹八分目にご飯を食べていたら、ヘモグロビンA1C が 5 % を超えることはないでしょう! 5 % を超えるような食生活をするから、超えるんだよ」

目から鱗の落ちる思いでした。 5 % を超えるような食生活をするから、超える…。私自身を振り返ると、酒をやめ、野菜から食べる植物性食品中心の食生活に変えて 11.1 % あった ヘモグロビンA1C が、 4.2~4.7% に下がりました。

しかし、もし今までどおりの食事をしていたらどうなったでしょう?

そういえば、こんなエピソードがありました。とある60代の男性が、糖尿病、高血圧症、脂質異常症があるということで私を訪ねてきました。血縁者でもあり、尿タンパクの数値が3+を示していたので非常に危険と考え、私の家にしばらく泊まり込んで治療をすることにしました。

1日に2回薬を飲み、1日3回食事をとります。そして午後に散歩をします。さらにかなり多量の降圧剤、、そして特効性インスリンを投与します。食事は1日3回でトータル 1700 kcal ですが、必ず 1 日あたり 700~800 g の山盛りの野菜がつきます。

脂肪は1日 30 g、タンパク質は体重1kgあたり1gを当初の目標にしました。すると、ものの10日間で3kgほど体重が減り、 ヘモグロビンA1C 9.0% から7.5% に下がり、食後2時間の血糖値も350mg/dlから160mg/dlまで下がってきました。それから約3ヶ月たったある日のこと、私の家での生活について、自分の息子や親戚に話しているのを偶然聞いてしまいました。「おまえよりひどい食い物だった」「おまえのほうがまだましだ」

正直ショックでした。彼にしてみれば、私たちよりひどい食べ物かもしれませんが、私たち家族は毎日おいしくいただいています。私たちの食生活は、そんなに世間離れしているのでしょうか? ショックである半面、「なるほどな」と感じることもありました。

それは、世間の人の普通の食事が本当に危ういということです。生活習慣痛は生活習慣の乱れで起こるといわれて久しいですが、「現代では糖尿病をはじめとする生活習慣病は、人並みの食事をし、普通に暮らしていたら必ず起こる」これが新しい常識です。「いま、日本人はみんなで赤信号を渡っているんだ」この頃、真剣にそう感じ始めました。

生命の危機(糖尿病)はこうして脱した

「予備軍」に隠された危険

多くの人は、境界型糖尿病ならまだ安心だと思っています。境界型糖尿病を、別名「糖尿病予備軍」ともいいます。この言葉、テレビコマーシャルや広告などでよく使われていますが、「予備軍」という響きが実によろしくない。
この響きが、「まだ糖尿病ではないから安心」という印象を与えてしまいます。

医師の中にも境界型糖尿病の患者さんに「よかったねー。まだ糖尿病じゃありません。これ以上悪くならないようにがんばりましょうね」と言っていました。でも、近い将来、こんな説明をすると、あとで患者さんに訴えられる日が来るかもしれません。

あとで詳しく述べますが、糖尿病の大問題とは細小血管障害(腎臓、眼の網膜、神経に栄養を送る血管がやられる)を招きやすいこと。そして大血管病(脳梗塞や心筋梗塞)を起こしやすいということです。最近の研究では、糖尿病と境界型糖尿病(糖尿病予備軍) においては、長く経過を追ってみると、この大血管病の起きやすさに差がないことがわかってきました。

糖尿病予備軍の段階から、動脈硬化は糖尿病並みに進むのです。つまり、糖尿病と糖尿病予備軍の運命はほとんど同じなのです。ここに、2 つの大きな社会問題が浮上します。

1つは、肥満のない人は特定健診では最初から引っかからないこと。特定健診は、メタポリックシンドロームの診断基準を採用しています。すると、肥満のない人はこの健康事業の網からもれてしまいます。ここにある地区の健診受診者339人(平均年齢約75歳)のBMIとヘモグロビンA1Cの関連を調査した最新データがあります。肥満ではないのに糖尿病、あるいは境界型糖尿病が疑われる人(BMI25未満、ヘモグロビンA1C 5.2 %以上)が6.9 %。そのうち、ヘモグロビンA1Cが正常でも糖尿病でもない糖尿病予備軍(BMI25未満、HbAI C5.2~6.1%% 未満)が最も多く、63% いました。

つまり太っていない糖尿病予備軍は6割以上いるのに、この人たちは特定健診に引っかからないのです。そして社会的にも、この診断基準は「太っていないから大丈夫」という大きな誤解を生み出しました。

しかしいまや、「日本人はやせたままでも、あるいはほんの少し太っただけでも糖尿病になる」。これが新しい常識です。太っていないからといって、安心はできないのです。もう1つの問題は、糖尿病予備軍には使える薬が少ないことです。糖尿病になれば立派な病気ですから、保険を使って手厚く治療することができます。ところが境界型糖尿病に使えるのは、α-GIという薬だけです。

いっそのこと糖尿病になってしまえば、思いきり治療できますが、境界型はできません。患者さんに、食事や運動でひたすらがんばってもらうしか方法がないのです。ですから境界型糖尿病と言われた人、「あーよかった」と喜んでいる場合ではないのです。
野草酵素を飲んだらたったの4ヶ月ででヘモグロビンA1Cが8.9から6.0%に

ヘモグロビンA1C 5.2%は安全領域か?

8年前の2010年、糖尿病の診断基準が大きく変わりました。以前は参考所見だったヘモグロビンA1Cが、診断基準として加わりました。

ヘモグロビン(Hb)とは血液中の赤血球に存在するタンパク質のことで、このうちブドウ糖と結合したものをヘモグロビンA1Cといいます。ブドウ糖はタンパク質と結合しやすい性質があり、赤血球が全身をグルグルめぐる間にヘモグロビンにブドウ糖がくっついてきます。

血液中にブドウ糖が多いと、それだけヘモグロビンA1Cがたくさんつくられます。一度くっついたブドウ糖は、赤血球の寿命である約120日間、けっして離れることはありません。血糖値の高い状態が長く続けば、ブドウ糖と結合したヘモグロビンがたくさんつくられ、ヘモグロビンA1Cの数値は高くなります。

赤血球の寿A叩は約120日ありますので、過去にさかのぼってどのくらいヘモグロビンA1Cがつくられたかがわかります。だいたい直近1~2ヶ月の平均の血糖状態を表現しているとされています。このヘモグロビンA1Cが6.1% 以上の人は、2010年から血糖値や臨床状態を参考にしたうえでならば糖尿病と診断してよいことになりました。

ちなみに5.2~6.1% 未満は要指導、5.2%未満は正常です。人間ドックに行ったことのある人ならご存じでしょうが、人間ドックでは多くの場合、ヘモグロビンA1Cは5.8% から異常として検出されます。しかし特定健康診査(別名メタボ健診) では、5.2% から異常として検出されています。なぜでしょうか。

特定健診は動脈硬化(この場合は糖尿病)になりやすい人を検出しますが、人間ドックは、ほぼ糖尿病と思われる人を検出するからです。同じ健康診断でも、目的が違うと基準もまったく異なるのです。そうすると、人間ドックなどで5.8% 以上を検出しているのは、糖尿病を見つけるという意味ではおおむね妥当な話かもしれません。

では、人間ドックでは検出されないけれど、特定健診で検出される5.2~5.8%未満の人は、どんな人なのでしょう。私自身、非常に興味があったのでいろいろ調べました。

しかし5.2%を基準とするためのはっきりした根拠は見いだせませんでした。ただ、200例程度の少ない自験例から検討してみると、ヘモグロビンA1Cは5.4 %なのにブドウ糖負荷試験(ブドウ糖75 gが入ったジュースを飲み、飲む前、摂取の30 分後、1時間後、2時間後の血糖値を測定して、血糖値の上がり具合を見る検査) で糖尿病の方はいましたし、健診でヘモグロビンA1C 5.2% 以上だった人の食後1〜2時間の血糖値を調べてみると、180mg/dlを超える食後高血糖パターンの人を約半数近く認めました。もちろん、6.1% に近づくにしたがって、その出現率も高くなるわけです。

つまり、ヘモグロビンA1C 5.2~5.8% 未満の人は、おそらくまだ糖尿病にはなっていないけれど、食後高血糖糖尿病予備軍(境界型糖尿病) になっている、あるいはそれに近づいている可能性が高いと考えています。ですから、ヘモグロビンA1C 5.2% はおそらく、食後高血糖が出現し始める数値なのです。そして実は、食後高血糖は糖尿病と同じくらい、心筋梗塞や脳梗塞を起こす可能性が高いのです。

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