日本人の食生活について、ちょっと振り返ってみましょう。欧米人はここ数千年、一気に押し寄せる高脂肪の波に打ち克つように進化してきました。ところが日本人は、つい最近この闘いに参戦したばかりです。
いま、日本は食のグローバリゼーションにさらされています。ここ60年で、日本人の食生活は、小麦を頂点とした食生活に改造されてしまいました。日本人が食してきたお米をはじめとする伝統食は、まるで文化的レベルが低いかのような偏見で見られる時代もありました。そんな時代を経て、いま日本人は米から離れ、食料自給率が40%もない国になってしまいました。
逆に、いま私たちが食するもののほぼ60% は、外国のものであり、しかも、その多くは私たちの祖先が見たことも食べたこともないものばかりです。もともと欧米人の糖尿病並みの膵臓の能力しかない私たちが、和食の伝統を軽んじて、欧米の食品を毎日おいしくいただく時代が到来したのです。
脂肪の摂取量は約4倍になり、糖質の内容は多糖類から単糖類へと変化し、穀物は精白が進み、インスリンが働きにくい環境と血糖値が上がりやすい環境がしのぎを削りながら広がり続けています。
ここへ国民そろっての身体活動量の低下がとどめを刺します。身体活動量というのは、運動量とは違います。会社に通ったり、買い物に行ったり、仕事をしたり、家事をしたり、生活上のすべての活動において体を使う量のことで、これを「身体活動量」といいます。脂肪やカロリーが増え、身体活動量が減ったらどうなるか。当然その先に待っているのたいじは肥満です。しかし日本人はそうなる前に、糖尿病というもっと大きな敵と対略しなければならないのです。