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糖質より危険なのは脂質(高脂肪食)

糖尿病はその名前のとおり、過剰にとりすぎた糖が尿に出る病気です。したがって糖尿病は、糖質の摂取量が増えたことで爆発的に増加したという認識が世の中に浸透しています。それは、本当のことでしょうか。

ここには誤解が2つあります。まず、いまから65年前、1946年(昭和21年)は糖質の摂取量が80.6% でした。ところが2000年(平成12年)には57.5 %にまで減少しています。しかしその糖質の中身が、現代と一昔前ではまったく違うのです。

昔は、糖質の中心は穀類とイモ類でした。多くはたくさんの糖がつながった多糖類で、消化・吸収されるのに時間がかかります。したがって血糖値も緩やかに上昇し、それを取り込むインスリンもゆっくり分泌されました。

ところが現代では、砂糖のように精製された糖や、果物に含まれる果糖のような少量でも簡単に吸収される糖の摂取が増えてきました。そのため、食後急激に血糖値が上昇する「グルコーススパイク」を起こしやすくなりました。

このグルコーススパイクが血管にダメージを与えて、心筋梗塞や脳梗塞など、大きな血管の病気の引き金になります。もう1つ深刻な問題は、脂肪の摂取量です。日本人は古代から脂肪摂取量が少なく、ここ1万年くらいの間は10~14g程度であっただろうと推察されています。ところがいまや、欧米人も顔負けの量の脂肪をとるようになりました。ある程度の脂肪量の食事の増加が、日本人の基本的な栄養と体格の向上に貢献してきたことは事実だと思います。また、

ここ半世紀の間アメリカで、脂肪を減らしても糖尿病が減らなかったことも事実です。しかしながら、日本人に限って考えたとき、ここ30年で増大した脂肪の摂取量が必ずしも日本人の健康に適した量であるかどうかは、大きな疑問のあるところです。

2000年の日本人の1日あたりの脂肪摂取量は、およそ60g。1946年からわずか50数年で、約4倍にも増えているのです。つまり日本人は、かつてない脂肪の大洪水の中にいるのです。その中で、インスリン抵抗性(インスリン感受性の低下/血糖値を下げるインスリンの働きが悪くなること)という初めての敵と闘う時代を迎えたのです。

その裏で、アメリカではこういうことが起きていました。1977年、アメリカでマクガバン・レポート(アメリカ合衆国上院栄養問題特別調査委員会報告書)が公表されました。

当時、アメリカでは心臓病やがんによる死亡率が高く、経済が破綻しかねないほど医療費が増大していました。そんな経済危機を何とか打開しようと行われたのが、1180億ドル(約25兆円)という予算を組み、3000人の専門家が7年の歳月をかけて取り組んだ大規模な健康調査です。

その結果、アメリカ人は栄養過剰でありながら必要な栄養素が足りないことがわかり、空前のダイエットブームが起こりました。この時、マクガバン・レポートに書かれていた理想的な食事が、「元禄時代以前の日本の食事」です。

それから、無脂肪のヨーグルトや牛乳が発売され、それまで好んで食べていた肉の脂身を食べなくなりました。そして、余った脂身を輸出するために、それまで1頭単位で輸出していた牛を部位別に切り分けて輸出するようになりました。

それを喜んで買っていたのが、日本人です。マクガバン・レポートが公表された3年後の1980年は、日本に対してアメリカが牛肉の輸入の自由化を迫った年でもあるのです。

1980年以降、日本人の総コレステロール値はうなぎのぼりに高くなり、その後アメリカ人と日本人のコレステロール値は逆転します。植物性の食事を長いこととっていた日本人に、突然訪れた高脂肪食のシャワー。日本人の体が初めて体験するこの欧米化された食事が、習慣病の原因となつたのです。

糖尿病闘病記 寝たきりにならないために

糖尿病 国民病 誰もが糖尿病になる時代

糖尿病 国民病

糖尿病 国民病 誰もが糖尿病になる時代です。私たち、日本人の食生活について、ちょっと振り返ってみましょう。欧米人はここ数千年、一気に押し寄せる高脂肪の波に打ち克つように進化してきました。ところが日本人は、つい最近この闘いに参戦したばかりです。

糖尿病 国民病

糖尿病が国民病として言及されることがあるのは、糖尿病の発症率が世界中で増加しており、多くの国で深刻な公共衛生上の問題になっているからです。糖尿病は慢性的な状態で、高血糖が続くことで健康に影響を及ぼします。

いま、日本は食のグローバリゼーションにさらされています。ここ60年で、日本人の食生活は、小麦を頂点とした食生活に改造されてしまいました。

日本人が食してきたお米をはじめとする伝統食は、まるで文化的レベルが低いかのような偏見で見られる時代もありました。そんな時代を経て、いま日本人は米から離れ、食料自給率が40%もない国になってしまいました。

逆に、いま私たちが食するもののほぼ60% は、外国のものであり、しかも、その多くは私たちの祖先が見たことも食べたこともないものばかりです。もともと欧米人の糖尿病並みの膵臓の能力しかない私たちが、和食の伝統を軽んじて、欧米の食品を毎日おいしくいただく時代が到来したのです。

脂肪の摂取量は約4倍になり、糖質の内容は多糖類から単糖類へと変化し、穀物は精白が進み、インスリンが働きにくい環境と血糖値が上がりやすい環境がしのぎを削りながら広がり続けています。

ここへ国民そろっての身体活動量の低下がとどめを刺します。身体活動量というのは、運動量とは違います。会社に通ったり、買い物に行ったり、仕事をしたり、家事をしたり、生活上のすべての活動において体を使う量のことで、これを「身体活動量」といいます。

脂肪やカロリーが増え、身体活動量が減ったらどうなるか。当然その先に待っているのたいじは肥満です。しかし日本人はそうなる前に、糖尿病というもっと大きな敵と対略しなければならないのです。

国民病になってしまった理由のまとめ

  1. ライフスタイルの変化: 現代社会では、過度なカロリー摂取、不健康な食事、運動不足などの要因が増加しています。これが肥満や生活習慣病、糖尿病の発症を促進しています。
  2. 高齢化: 世界的に人口が高齢化しているため、加齢に伴って糖尿病のリスクも増加しています。
  3. 遺伝的な要因: 遺伝的な傾向も糖尿病の発症に影響を与えることがあります。
  4. ストレスや環境要因: ストレスや環境の変化も糖尿病のリスクを増加させる可能性があります。

糖尿病は患者にとっては慢性的な状態であり、合併症が生じる可能性があるため、健康上の問題として重要です。予防や早期発見、適切な治療などが大切です。

お米大好き日本人の糖尿病リスク

糖尿病

通常の食事をしていたら糖尿病になってしまう

特定健診で検出される血糖値の基準は、ヘモグロビンA1C 5.2% です。この数値、いくら予防のためとはいえ厳しすぎると思いませんか。私は、各地の自治体から依頼されて、特定健診のデータをとりまとめています。

そのたくさんのデータを見ると、受診者のヘモグロビンA1C の平均値は 5.2 % 前後の地域が多いのです。つまり、健診を受けた人の約半数は、ヘモグロビンA1C が 5.2 % を超えているのです。これではいくらなんでも、基準として厳しすぎるのではないか。当初私は、勝手にそう思い込んでいました。しかし、尊敬する糖尿病専門のある医師のひと言で、目が覚めました。

「よけいに食べたり飲んだりせず、腹八分目にご飯を食べていたら、ヘモグロビンA1C が 5 % を超えることはないでしょう! 5 % を超えるような食生活をするから、超えるんだよ」

目から鱗の落ちる思いでした。 5 % を超えるような食生活をするから、超える…。私自身を振り返ると、酒をやめ、野菜から食べる植物性食品中心の食生活に変えて 11.1 % あった ヘモグロビンA1C が、 4.2~4.7% に下がりました。

しかし、もし今までどおりの食事をしていたらどうなったでしょう?

そういえば、こんなエピソードがありました。とある60代の男性が、糖尿病、高血圧症、脂質異常症があるということで私を訪ねてきました。血縁者でもあり、尿タンパクの数値が3+を示していたので非常に危険と考え、私の家にしばらく泊まり込んで治療をすることにしました。

1日に2回薬を飲み、1日3回食事をとります。そして午後に散歩をします。さらにかなり多量の降圧剤、、そして特効性インスリンを投与します。食事は1日3回でトータル 1700 kcal ですが、必ず 1 日あたり 700~800 g の山盛りの野菜がつきます。

脂肪は1日 30 g、タンパク質は体重1kgあたり1gを当初の目標にしました。すると、ものの10日間で3kgほど体重が減り、 ヘモグロビンA1C 9.0% から7.5% に下がり、食後2時間の血糖値も350mg/dlから160mg/dlまで下がってきました。それから約3ヶ月たったある日のこと、私の家での生活について、自分の息子や親戚に話しているのを偶然聞いてしまいました。「おまえよりひどい食い物だった」「おまえのほうがまだましだ」

正直ショックでした。彼にしてみれば、私たちよりひどい食べ物かもしれませんが、私たち家族は毎日おいしくいただいています。私たちの食生活は、そんなに世間離れしているのでしょうか? ショックである半面、「なるほどな」と感じることもありました。

それは、世間の人の普通の食事が本当に危ういということです。生活習慣痛は生活習慣の乱れで起こるといわれて久しいですが、「現代では糖尿病をはじめとする生活習慣病は、人並みの食事をし、普通に暮らしていたら必ず起こる」これが新しい常識です。「いま、日本人はみんなで赤信号を渡っているんだ」この頃、真剣にそう感じ始めました。

生命の危機(糖尿病)はこうして脱した