セレンなどが作るメタロチオネインはヨウ素やセシウムを除去する

水銀、鉛、カドミウムなど重金属を体外に排泄

セレンには、本来、体の中にあってはいけない重金属を体外に排出する作用があります。よく知られているのが、水銀や鉛、カドミウムといった体に害を与える重金属です。

また放射性のヨウ素、セシウム、ストロンチウムなどの重金属も除去します。いずれも福島原発事故で飛散した放射性物質です。この点からも、内部被曝の影響を防ぐのにセレンは役立ちます。

ではどのようなメカニズムで、セレンは重金属を除去するのでしょうか。1957年、馬の腎臓から重金属と結合するタンパク質が発見され、メタロチオネインと命名されました。

メタロチオネインは、動物にも植物にも含まれています。もちろん人間の体内にもメタロチオネインは存在し、とくに肝臓、腎臓、膵臓、小腸に多いのが特徴です。メタロチオネインは、セレン、亜鉛、銅らと含硫アミノ酸を原料として体内で合成されるので、これらの栄養素をきちんと摂取することが大切です。

また、メタロチオネインはセレンの刺激で形成されるので、セレンはとくに重要な栄養素といえるのです。細胞などに重金属や放射性物質を見つけると、メタロチオネインはそれらを捕まえて、解毒し、排出してしまいます。

またメタロチオネインには放射線によって発生するフリーラジカルや活性酸素を消去する作用があります。

血中セレン濃度が高いと甲状腺がんになりにくい

セレンによって甲状腺などにたまった放射線ヨウ素を取り除くことができれば、甲状腺がんの発症を防ぐ効果が期待できます。しかし、それだけでなく、セレンそのものにも甲状腺がんを予防する働きがあります。

健康な人の甲状腺はセレン濃度が高く、不足すると甲状腺ホルモンの障害が現れます。カナダ産のセレンの豊富な小麦を食べていた人たちが、ヨ一口ッパ産のセレンが乏しい穀物に切り替わったところ、セレンによって作られる酵素の活性低下にともない、甲状腺ホルモンの分泌も低下したことが報告されています。

甲状腺がんの患者43人の血液と健康な人の血液を比較した調査があります。それによると、甲状腺がん患者のセレン浪度は、健常者より明らかに低く、濃度が低いほど甲状腺がんが増加しました。

一方、チェルノブイリ原発事故では、甲状腺異常の予防のためにセレンが用いられ、効果を発揮したといわれています。前述しましたが、放射性ヨウ素の内部被曝を避けるには、ヨウ素(ヨード)をとる必要があります。同時に、セレンも十分にないと、放射線による甲状腺がんを防ぐことができないといえます。