最近、厚生省を中心として、成人病を「生活習慣病」と呼ぼうとする動きがあります。それは、従来の成人病に対する「早期発見・早期治療」という姿勢を一歩進めて、成人病そのものにかからないように、成人病を予防しようという考え方が主流になってきているからです。

また、日本人の食生活をはじめとするライフスタイルの変化にともない、従来は成人だけがかかるとされてきた糖尿病、高血圧、脂肪肝などといった病気が、最近子供にまで出始めていて、成人病という名前が現実と合わなくなってきたことも理由のようです。

この生活習慣病という言葉は言いえて妙で、実にピッタリした表現だと思います。成人病はすべて、食べすぎや飲みすぎ、運動不足や睡眠不足、喫煙といった悪い生活習慣から生まれます。生活習慣といっても、食習慣だけではありません。遊びや仕事など、あらゆる場面での生活習慣が、病気の原因となります。生活習慣病の多くは、かくれ肥満と密接な関係があります。これらの生活習慣病に共通するのは、初期には痛みなどの自覚症状がほとんど出ないことです。

病気は体の奥深く静かに、しかし確実に進行します。周囲にもわかりにくいため、病気によっては、危険な状態に悪化するまで、本人も周囲もまったく気づかないこともあります。

これは、かくれ肥満の進行の仕方とまったく同じです。かくれ肥満も、生活習慣病も、自分が気づかない、悪い生活習慣が作り出します。成人病というと、年とともに身体が老化していくことで起こる、避けることのできない病気という感じがしますが、生活習慣病と呼ぶ場合は、悪い生活習慣のゆがみを改善しさえすれば、よくすることができる病気、という意味が含まれています。

つまり、自分で治せるのです。また、よい生活習慣を身につけ、日常生活を規則正しいものにすることで、はじめから予防することもできるのです。