ポイントはインシュリンの分泌量を少ない状態を維持すること
「低インシュリンダイエット」は、インシュリンの働きをダイエットに利用したものです。
インシュリンの働きをどのように利用すれば、やせることができるか、その基本ルールがあります。この基本ルールをしっかり理解して頭に入れておかないと失敗してしまいます。
こちらで紹介したとおりインシュリンには、「消費されずに残った血中の糖を中性脂肪として蓄える働き」と、「いったん蓄えたエネルギーを分解させないように制御する働き」があります。そして、インシュリンの量が増えると、ての2つの働きによって人は太りやすくなります。血糖値の上昇スピードをできるだけゆるやかにすれば、過剰にインシュリンが分泌されることなく、肝臓や筋肉に送り込まれる糖の量は必然的に少なくなります。
肝臓や筋肉に蓄えられる糖の許容量を超えることがなければ、糖は中性脂肪として脂肪細胞に運ばれることはありません。
つまり、インシュリンの分泌量をできるだけ少なくすれば、糖が脂肪に変わることもなく、体内で消費されてしまうため、太ることがなくなるのです。
このメカニズムをダイエットに利用したのが、「低インシュリンダイエット」です。そして、インシェリシの分泌量を抑えることによって、もう1つダイエット効果があらわれます。
それは、やせるホルモンと呼ばれる「グルカゴン」が膵臓から分泌されることです。
グルカゴンの働きは、肝臓をかいして糖を血液中に運び、血糖値を安定させることですが、インシュリンの分泌量を抑えることで、ひんばんに分泌されるようになります。
そして、グルカゴンはインシュリンとは違って、脂肪細胞内の脂肪を分解させる働きがあるのです。
つまり「低インシュリンダイエット」とは、血糖値を低く保つことで、
- インシュリンの分泌量を低く抑え、脂肪細胞への蓄えを阻止する
- グルカゴンによる脂肪燃焼を促進
やせることができる、というものなのです。これらのメカニズムから、「低インシュリンダイエット」では、血糖値を低く保ちさえすれば、運動や食事制限の努力をしなくてもダイエットすることが可能になるのです。
まずは、炭水化物を選んで食べる
インシュリンの働きを考えると、太らないためには、まず血糖の急上昇を抑え、インシュリンの分泌量を制御することが大切です。
では、どうすればよいのでしょうか?その方法は食事法にあります。急激に血糖を上昇させることなく、糖をゆっくりと吸収してくれる食材を選ぶことなのです。
その鍵となるのが炭水化物(糖質)です。炭水化物は、たんばく質、脂肪と並ぶ3大栄養素の1つで、ご飯やパンなどに多く含まれており、人間の活動に必要なエネルギーに変わる重要な栄養素です。
炭水化物はほかの栄養素にくらべて、糖に変わる割合がひじょうに高く、したがって、炭水化物の量を減らすと、必然的に血糖値は低下します。
しかし、炭水化物を全く摂らない、または、極端にカットしてしまうのは大きな間違いです。炭水化物の量を減らしてしまうと、体重はたしかに減りますが、身体にとって大きな弊害である「糖新生」が頻繁に起こります。
炭水化物をカットすると、摂取カロリーが低くなるため、身体に取り込まれるエネルギーが不足してしまいます。
人間の身体は、その不足した分のエネルギーを、脂肪を分解して補おうとしますが、それと同時に、筋肉細胞も分解してエネルギーとして利用してしまうのです。これが、「糖新生」です。
この「糖新生」によって筋肉が落ちると、基礎代謝が低下し、消費するエネルギーも減ってしまうため、元の食事量にもどしたとたん、リバウンドしたり、ふたたびダイエットにトライしてもやせにくい状況に陥ってしまうのです。
これが多くの人のダイエットで失敗してしまうリバウンドです。
つまり、炭水化物をカットしたり、極端に摂取カロリーを減らすことは、逆に太りやすく、やせにくい体質を作ってしまうのです。
それでは、炭水化物をきちんととりながら、血糖値を低く保つにはどうすればいいのかというと、血糖値が急激には上がらない炭水化物を上手に選んで食べればいいのです。炭水化物には、血糖値が上がりやすいものと上がりにくいものがあります。ですから、血糖値の上昇スピードのゆるやかなものを選んで食べれば、インシュリンは適正な分量しか分泌されません。
つまり、インシュリンがそれほど必要ではなくなるのです。この「低インシュリン状態をキープする」のが、低インシュリンダイエットの基本なのです。
GI値について
ここで登場するのが、GI Glycemic Index(グリセミック・インデックス)値です。いままでのダイエットの目安であった食品のカロリーは、低インシュリンダイエットでは忘れてください。頭の中にあるダイエットの基礎知識やカロリーを一端リセットします。
このGI値は、炭水化物に含まれている糖質の量をもとに、血糖値の上昇率から吸収スピードを比較した値です。
このGI値が低いほど「血糖値の上昇が遅い」=「インシュリンの分泌が低く抑えられる」という図式になります。簡単にいうと、これまで食べていたGI値の高い食品を低い食品に代えるだけで、太りにくくなり、さらにグルカゴンが働いてやせるというわけです。
食事の中心となる主食のなかでもGI値が高いものと低いものがあるように、野菜や果物、お菓子のなかでもGI値は高いものもあれば低いものもあります。
GI億が高い食材ほど、食べたときの血糖値の上昇が逢いので、それにともなうインシュリンの量も多くなります。
ですから、GI値の高いものばかり食べていると、血糖値の上昇がつづき、インシュリンの量が増え、太りやすい状態になります。しかし、血糖値の上昇スピードが速くても、その食材に含まれる糖質の量によって、上昇に上限があります。
つまり、食材に含まれる糖質の量が少なければ、血糖値が過剰に上昇することはありません。
したがって、たとえGI値が高い食材でも、たくさん食べなければ、血糖値の上昇を抑えられます。高GI値の食べ物を減らした分は、ほかの低GI値の食材を食べればいいのですから、食事の全体量は減らさなくてすみます。
つまり、GI値の低いものを上手に選んで食べれば、食事量を減らさなくても、痩せることができるということです。
ここが、食事量を減らして空腹感というストレスと賢明に闘ってきたいままでのダイエット法との大きな違いです。食材によってGI値は違います。
GI値がとくに高い食材(糖質含有量が多い食材)はだいたい決まっていますので、それらを減らすだけで、簡単に低GI食ができます。
これまでとは異なる賢いダイエット方法なのです。