標準体重がかくれ肥満を見えなくしてしまう

一般的な肥満の指標となる「標準体重」は、ある身長の人が、最も病気になりにくい体重という基準で生まれた、いわば「健康体重」です。
一覧表にするとわかりやすいのですが、これよりもプラス10~20%体重が重ければ「肥満ぎみ」、20%以上なら「肥満」。マイナス10%よりも少なければ「ヤセ」となります。このうち、プラスマイナス10%以内の体重であれば、正常の範囲内ということになります。
厚生省の統計によると、肥満といえる中年女性は、全体の約20% 。ということは、残りの約80%の中年女性はヤセる必要がないということになります。
しかし実際は、どうでしょうか?「ヤセなくてもいい」と判断されている80%の中年女性のなかには、正常範囲内ギリギリの人や、肥満ぎみの人もたくさんいるはずです。また、現実に女性の7割以上がヤセたがっているいるというのは、標準体重では「重い」と感じているためもあるのではないでしょうか。

標準体重は、人間ドックや集団検診などで集められた多数の人のデータをもとにしています。それにより、同じ身長の人で、最も病気の雁患率が少ない体重が標準体重として決められました。
たとえば、156cm女性なら、53.5kgです。だいたい、日本人の40% は、この標準体重プラスマイナス10%の範囲内に入ります。このようにして決められた標準体重は、一見非常に合理的に見えますが、さまざまな問題点を含んでいます。
たとえば、人間ドックや集団検診を受ける人は、中高年が多く、必ずしもどの年代の人にも当てはまるとは限りません。事実、調査したの女子大生の平均体重は、156cmの人は49.9kgと標準体重より3.6kgもヤセていました。
つまり、半数以上の女子大生は、健康のためには標準体重まで太らなければいけないことになります。
また、人間ドックで測定した体重は、あくまでもある一時点における体重なので、病気のためにヤセた人も含んでいます。しかし、この人はヤセているために病気になったのではなく、病気のためにヤセたのです。つまり重要なのは、その時点での体重ではなく、体重の変化なのです。たとえば、A子さんは、若い頃はヤセ型で、標準体重より軽かった女性です。しかし、中年以降体重が増えて、標準体重になりました。ところが、その頃から、肝臓に脂肪がついた脂肪肝と診断され、まさか自分が、驚きます。
標準体重になって、成人病を発病したとすれば、その人にとっては、その標準体重は太り過ぎの状態なのかもしれません。このように、標準体重だけでは把撞できない肥満が、実際はたくさん存在することが、しだいに明らかになってきました。冒頭でご紹介した論文のような研究が、それを裏付けています。
数値に現れない肥満、つまり「かくれ肥満」の存在です
実際、糖尿病患者さんの指導に、長くこの標準体重の数値を使ってきました。もちろん、成人病の治療において、標準体重の存在は重要です。
しかし、だからといって「標準体重だから健康だ」というわけではありません。じつは標準体重は、人間ドックのような集団で、患者さんを十把ひとからげに考え、肥満を判定するのには、威力を発揮します。しかし、あまりにも高度に複雑化する社会で、ストレスや食生活の変化にさらされている現代人には、従来の画一的な数値や指導が通用しなくなってきています。
標準体重プラス10~20% までは、肥満ではなく「肥満ぎみ」と呼ばれていますが、実際には「肥満ぎみ」の大半が、脂肪率30 %を超える肥満になるのではないかとも感じています。
もっと多くの肥満が、標準体重の裏には隠れているはずです。標準体重は、体重の中身(脂肪や筋肉の割合)や体重の変化を考えなかったために、多くのかくれ肥満を見のがしてきた可能性があります。また、標準体重の範囲内であるのを口実に、かくれ肥満者たちが自分を甘やかし、ますます脂肪がついてしまうことになるかもしれません。
体重だけでは計れない肥満、それがかくれ肥満です。かくれ肥満は目に見えないために、のがぉか見逃され、気づかれずに、体の中でひそかに進行していきます。それがいつか全身を冒し、目に見える肥満と同じように、恐ろしい成人病を引き起こし、自分と家族を苦しめることになります。目に見えないゆえに、自分が肥満であると知らないかくれ肥満。健康診断でさえ見つけることのできないかくれ肥満は、皆さんの一人ひとりが、自分で注意することによって発見していかなければならないのです。

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