標準体重がかくれ肥満を見えなくしてしまう

一般的な肥満の指標となる「標準体重」は、ある身長の人が、最も病気になりにくい体重という基準で生まれた、いわば「健康体重」です。
一覧表にするとわかりやすいのですが、これよりもプラス10~20%体重が重ければ「肥満ぎみ」、20%以上なら「肥満」。マイナス10%よりも少なければ「ヤセ」となります。このうち、プラスマイナス10%以内の体重であれば、正常の範囲内ということになります。
厚生省の統計によると、肥満といえる中年女性は、全体の約20% 。ということは、残りの約80%の中年女性はヤセる必要がないということになります。
しかし実際は、どうでしょうか?「ヤセなくてもいい」と判断されている80%の中年女性のなかには、正常範囲内ギリギリの人や、肥満ぎみの人もたくさんいるはずです。また、現実に女性の7割以上がヤセたがっているいるというのは、標準体重では「重い」と感じているためもあるのではないでしょうか。

標準体重は、人間ドックや集団検診などで集められた多数の人のデータをもとにしています。それにより、同じ身長の人で、最も病気の雁患率が少ない体重が標準体重として決められました。
たとえば、156cm女性なら、53.5kgです。だいたい、日本人の40% は、この標準体重プラスマイナス10%の範囲内に入ります。このようにして決められた標準体重は、一見非常に合理的に見えますが、さまざまな問題点を含んでいます。
たとえば、人間ドックや集団検診を受ける人は、中高年が多く、必ずしもどの年代の人にも当てはまるとは限りません。事実、調査したの女子大生の平均体重は、156cmの人は49.9kgと標準体重より3.6kgもヤセていました。
つまり、半数以上の女子大生は、健康のためには標準体重まで太らなければいけないことになります。
また、人間ドックで測定した体重は、あくまでもある一時点における体重なので、病気のためにヤセた人も含んでいます。しかし、この人はヤセているために病気になったのではなく、病気のためにヤセたのです。つまり重要なのは、その時点での体重ではなく、体重の変化なのです。たとえば、A子さんは、若い頃はヤセ型で、標準体重より軽かった女性です。しかし、中年以降体重が増えて、標準体重になりました。ところが、その頃から、肝臓に脂肪がついた脂肪肝と診断され、まさか自分が、驚きます。
標準体重になって、成人病を発病したとすれば、その人にとっては、その標準体重は太り過ぎの状態なのかもしれません。このように、標準体重だけでは把撞できない肥満が、実際はたくさん存在することが、しだいに明らかになってきました。冒頭でご紹介した論文のような研究が、それを裏付けています。
数値に現れない肥満、つまり「かくれ肥満」の存在です
実際、糖尿病患者さんの指導に、長くこの標準体重の数値を使ってきました。もちろん、成人病の治療において、標準体重の存在は重要です。
しかし、だからといって「標準体重だから健康だ」というわけではありません。じつは標準体重は、人間ドックのような集団で、患者さんを十把ひとからげに考え、肥満を判定するのには、威力を発揮します。しかし、あまりにも高度に複雑化する社会で、ストレスや食生活の変化にさらされている現代人には、従来の画一的な数値や指導が通用しなくなってきています。
標準体重プラス10~20% までは、肥満ではなく「肥満ぎみ」と呼ばれていますが、実際には「肥満ぎみ」の大半が、脂肪率30 %を超える肥満になるのではないかとも感じています。
もっと多くの肥満が、標準体重の裏には隠れているはずです。標準体重は、体重の中身(脂肪や筋肉の割合)や体重の変化を考えなかったために、多くのかくれ肥満を見のがしてきた可能性があります。また、標準体重の範囲内であるのを口実に、かくれ肥満者たちが自分を甘やかし、ますます脂肪がついてしまうことになるかもしれません。
体重だけでは計れない肥満、それがかくれ肥満です。かくれ肥満は目に見えないために、のがぉか見逃され、気づかれずに、体の中でひそかに進行していきます。それがいつか全身を冒し、目に見える肥満と同じように、恐ろしい成人病を引き起こし、自分と家族を苦しめることになります。目に見えないゆえに、自分が肥満であると知らないかくれ肥満。健康診断でさえ見つけることのできないかくれ肥満は、皆さんの一人ひとりが、自分で注意することによって発見していかなければならないのです。

見た目は「標準以下」だからこそ注意が必要

今まで、肥満というと、誰もが体重のことばかりを気にしてきました。体重が重ければ肥満、体重が減ればダイエットは成功、と。
いまだに、「ヤセるには、体重さえ減ればいい」という思いこみが根強くあるようです。しかし、肥満の医学的な定義はもともと、「体の中の脂肪が多い状態」です。ですから、体重は軽くても、脾肪の占める割合(体脂肪率) が高ければ、肥満していることになります。
「体重が重いこと」と「体の中の脂肪が多いこと」は別物なのです。ただ、体脂肪率は、体重と違って計りにくく、外からはわからないので、「体重が重ければ体脂肪も多い」という一般論から、これまでは、つねに体重が肥満度の基準となってきました。

人間の体は、血液を含む水分、筋肉や骨、そして脂肪から成り立っています。このうち、一般的に脂肪は体重の20%程度ですが、この割合が30%を超えると、成人病の危険度が増すことがわかっています。
したがって、体脂肪率30%以上 が、ダイエットを必要とする肥満である、といってもいいでしょう。
計れる体重と違って、体脂肪率は「見た目」ではまったくわかりません。
外見ではいかにも肉付きのよいように見える人が、体脂肪率は低い場合もありますし、逆にどこから見ても太って見えない人が、体脂肪率だけ高い場合もあります。
こういう方は、いくら見かけが太っていなくても、このままではいろいろな病気を引き起こすでしょう。ですから、ふつうの肥満者と同様に、ヤセなければいけません。
しかし、従来のダイエットは、体重を減らすことばかりに目を向けて、「本当に減らさなければいけないのは、脂肪である」ということをおろそかにしていました。本当に健康的に美しくヤセるには、体重をやっきになって減らすのではなく、脂肪の割合を減らすことが必要なのです。

太っているかヤセているかは、体重や肥満度からではわからないことを、知ってもらいたいと考えていました。体重は重くなくても、また、外見が太っていなくても、この脂肪体重が重ければ、立派な肥満です。そして、こういう人は意外にたくさん隠れているのです。
かくれ肥満は、見た目や体重では判断できません。また、かくれ肥満を自覚していない人もかなりいます。

かくれ肥満チェック

自己診断用チェック

  1. 18歳(男性は20歳)のときより現在の体重の方が重い
  2. 昔はヤセ型だつたが、今は標準体重だ
  3. 体重は変わっていないが、体型が崩れた
  4. 体重は変わっていないが、ウェストがきつくなった
  5. 下っ腹がでてきた
  6. ヒップがたるんできた
  7. 二の腕が太くなった
  8. 着やせするタイプ
  9. ダイエットを何度も行っている
  10. リバウンドしたことがある
  11. それほど食べていないのに太る
  12. 昼寝やうたた寝をよくする
  13. 運動不足
  14. 移動手段はほとんどが車
  15. 休日はでかけずにごろごろしている
  16. 最近は疲れやすい
  17. 体力がない
  18. 階段を昇ると息が切れる
  19. ウェストトとヒップの比が0.8以上ある
  20. 更年期にさしかかっている
  21. 冷え性
  22. 甘いものが好き
  23. 揚げ物をよく食べる
  24. アルコールが好き
  25. ジュース、コーラ-、缶コーヒーをよく飲む
  26. 朝食を抜くことが多い
  27. 夜食が多い
  28. 間食が多い
  29. 外食が多い
  30. お菓子があるとつい手がでてしまう
  31. 退屈したりいらいらすると食べてしまう
  32. 満腹にしない気がすまない
  33. 残飯があると食べてしまう
  34. 満腹でも好きなものなら食べられる

あてはまる○の数が15個以上「A級かくれ肥満」

さぁ大変! いつの間に脂肪がついてしまったのでしょう? あなたはかなり前からかくれ肥満だったようです。しかも、すでに非常に体脂肪率が高くなっている危険があります。
ひょつとすると、30%を超えて、成人病への大台」に乗ってしまっているかもしれません。
このくらい○ がついてしまえば、あなたはもう立派なかくれ肥満。
食事をきちんととらずにお菓子で代用していたり、以前より歩かなくなったり、そんなライフスタイルが、あなたの体の中にいつの間にか脂肪となって蓄積されていったのでしょう。
そして、なまじ着ヤセして見えるばっかりに、自分がかくれ肥満となっていたことに気づかず、今日まで過ごしてきてしまったのかもしれません。
しかし、そんな生活を続けていたら、早晩なんらかの成人病となってしまうのは必至です。そうとわかったらさっそく、かくれ肥満対策を立てましょう。

あてはまる○の数が5~14個「B級かくれ肥満」

そういえばこのごろ、前より体が重いように感じていた。そんなあなたは、かくれ肥満の中級者。ちょうど、そろそろ何か対策を講じないといけない頃です。
そのまま気づかずに過ごしていたら、体脂肪率はどんどんその割合を高めていってしまったでしょう。このぐらいの○がつく程度の人は、何か変だとは思っても、まだまだ大したことはないだろうとタカをくくりがちです。しかし、脂肪はつけばつくほど、さらなる脂肪を呼ぶもの。
生活習慣を直さないと、さらに脂肪体重を増やす結果にもなりかねません。このままの生活を続ければ、遠からぬ将来、あなたの体脂肪率は、危険値に達するでしょう。そうなったらタイヘン。最近気になりはじめたそのウエストやヒップラインも、さらにくずれていってしまうはずです。

あてはまる○の数が4個以下「級かくれ肥満予備軍」

あなたはまだかくれ肥満ではありません。しかし、体脂肪率はここ数年で徐々に増えてきている恐れがあります。体重は変わらずに維持できたとしても、ライフスタイルによっては、肝心の中身が筋肉かんじんから脂肪に置き代わってしまう可能性は大いにあるのです。
それを防ぐには、ちょっとでも脂肪がついたら、すぐに解消すること。あなたの場合、まだ脂肪のつき方は深刻ではないでしょうから、軽い運動をすることによって脂肪がつくのを防ぐことができます。
それに加えて、今から食生活のチェックをすれば、かくれ肥満にはならずにすむでしょう。
また、筋肉をつけることによって、あらかじめ脂肪がつきにくい体をつくっておくのも得策です。体力も向上し、健康維持に大いに役立つはずです。

体重だけではわからないわからない真の「かくれ肥満の正体

「かくれ肥満」と聞いて、どんなことをイメージするでしょうか?見た目にはそんなに太っていないように見えるけれど、本当は服で隠しているだけ。脱ぐとけっこうすごいのよという着ヤセ肥満?それとも、体重はまあ標準並み、もしくはヤセぎみだけど、全体にしまりがなくて…というブヨプヨタイプ?一口に太っているといわれている人たちは、いろいろな形で分類されます。
自分で自覚している肥満の種類が異なっているケースも多々あります。

「固太り」とか「筋肉質タイプ」「水太り」 等々、ダイエットの話をしているときなどに、ごく当たり前のように出てくるのではないでしょうか。
しかし実は、太っているかどうかを決めるのは、たった1つの基準だけなのです。それは何か。体の中にある脂肪の割合。これだけが、肥満か否かを決めるのです。

脂肪があるから太っている…なんて、安易に考えてはいけません。体の中に脂肪がたくさんあるからといって、見かけも太っているとは限りません。つまり、今までヤセ型だと思っていた人の中にも、肥満がいる、ということなのです。

飽食の時代といわれる現代では、太ることに対する恐怖や羞恥心はたいへん強くなっています。特に、それは若い女性に顕著です。
若い世代の憧れである女優やタレントなどは、細い手足に高い腰の位置、小さな顔が条件。全身のバランスを重視するこれらのタレントたちが、10 〜20代の女性の「お手本」なのです。
もともと仕事でスレンダーを維持している人と一般人を同じ土俵で評価してはいけないのです。

だから、若い女性は、健康上の理想とされる「標準体重」より軽いにもかかわらず、もっともっとヤセたいと願っています。

ところが、標準体重を超え、ヤセなければ成人病の危険がある中年以降の女性に限って、「もう年だから、どうだっていいわ」「ヤセろなんてよけいなお世話」と、ダイエットに対する関心が低くなってしまっています。

厚生省の統計によると、中年女性の約20~25% が肥満といわれています。しかも怖いのは、中年女性の場合、なぜか明らかに太っていても、「このくらいふつうでしょう?私は肥満というほどではない」と思っている人がけっこう多いことです。

肥満の治療は同時に、成人病の予防と治療でもあります。しかし、自分の肥満に気づいていなければ、スタート地点にも立てません。ましてや、標準体重以下の人で、自分の肥満度を気にする人がどれほどいるでしょうか。まずいないと言っていいでしょう。
しかし、実際は標準体重かそれ以下でも、体脂肪率(体の中の脂肪の割合) が高く、肥満者と同じように、成人病になる危険のある人が少なくないのです。体重は標準以下でも肥満といえる人=かくれ肥満者の特徴は、外見はそれはど太っていないにもかかわらず、体の中には肥満者と同じくらい体脂肪がついている。ことです。

体脂肪は、体に対していろいろな悪さをし、さまざまな成人病の原因となります。ふつうの肥滞者は、外見からも体脂肪が多いことがわかりますから、たとえ自覚してなかったとしても、医師から注意を受け家族からも注意を受けたります。しかし見た目が太っていないかくれ肥満は、自分の脂肪率の高さなど知るよしもありません。
また、他人からも太っているとは思われないので、知らない間に成人病を進行させてしまう危険が、ふつうの肥満者よりもはるかに大きいのです。あなたは、自分が「かくれ肥満」でないと言い切れますか?

標準体重という落とし穴

標準体重内におさまっていれば大丈夫なのか?

健康や体重を意識している人なら、「標準体重」という言葉は聞いたことがあると思います。最近では、人間ドックや、会社や地域の健康診断における肥満の判定に必ず使われています。

「痩せ気味」だとか「普通」「肥満気味 などと表示されている、あれです。「普通」が標準体重の範囲内です。この枠はけっこう広いですから、1ちょっと太ったかきと思っても、まだまだ標準範囲内で、「なんとかクリアー」などという場合も多いと思います。

では、この標準体重、どのようにして決められたのでしょうか?。その身長において一番病気にかかりにくく、また、最も死亡率の低い体重、という考えで決められたものなのです。痩せ気味、肥満気味の判定はなんとなくデブ指標のように感じますがそうではないのです。間ドックや、健康診断受診者、あるいは生命保険加入者についての数多くの調査成績をもとにして作られました。標準体重を考える上で、世界共通のものさしとして、「BMI」というものがあります。BMIとは、体重(kg)を身長(m) の2乗で割った体格指数のことです。
BMIを実際に計算する場合、156cmの人であれば

身長156cm、66kgの人であればBMIは52÷(1.56×1.56)=21.4

です。156cmの人では1.56×1.56×22=53.5kgとやや重めの体重になります。

体重による肥満度判定例(身長156cmの人の場合)

痩せ 正常範囲 肥満ぎみ 肥満
48.2kg未満 48.2kg以上~58.8kg未満 58.8kg以上~64.2kg未満 64.2kg以上

この体重からプラスマイナス10% 以内を正常範囲、10% 以上20%未満を肥満ぎみ、20%以上を肥満、マイナス10%以下を痩せ、と判断します。156cmの人の例では、以下のようになります。この表を見ると、「かなり太めでも正常の範囲なんだと感じる方が多いでしょう。
しかし、1000人の日本女性の統計によると、若い女性の平均BMIは20.5(156cmなら49.8kg) でした。となると実際は、約6割の人が、今よりもっと太らないと標準体重にならないのです。
多くの若い女性がヤセたがっているのに、健康のために太れ、ということになってしまうなんて、ヘンな話だと思いませんか?

また、過激なダイエットで急激にヤセたりしないかぎり、若い女性には、ヤセ型の人に貧血などの病気が多いということもありませんでした。りかん病気の雁患率や死亡率が最低になるようにして求められた標準体重は、一見たいへん論理的ですが、実はその陰で、以下に述べるようなさまざまな問題を含んでいるのです。

体重の中身の問題「筋肉と脂肪の割合を無視している」

肥満は、本当は体重が重い状態をいうのではありません。体の中の「脂肪」が非常に多くなった状態が、肥満なのです。同じ体重でも、脂肪の割合(脂肪率) は人により異なります。体重が重くても筋肉質の八は肥満ではありませんが、ヤセていても脂肪率が高ければ肥満です。それなのに、今の標準体重では、その脂肪率を無視し「体重」だけしか問題にしていないのです。

脂肪が多いかどうかは、脂肪率計で計れますが、そのほかにも、18歳(男性では20歳)のときの体重が参考になります。骨格や筋肉は、よほど運動を続けて鍛えていない限り、18歳(男性では20歳) 以降は増えないので、18歳以降増加した体重は、ほとんど脂肪が増えた分なのです。つまり、18歳の時の体重より現在の体重がどれほど増えたかが、増えた脂肪量の重要なめやすとなります。

体重の変化の問題「一時点の体重だけで判断している」

標準体重を最も健康とすると、それよりも軽い人は不健康ということになりますね。ところが、標準体重を決めるための人間ドックや健康診断による調査では、あくまでも、その時点での瞬間的な体重しかわかりません。
したがって、計量前後に急激に体重が変化している人がいても、その推移が反映されないことになってしまいます。たとえば、標準体重でヤセ型とされる人の中に、病気や過激なダイエットで、最近急激にヤセてきた人が含まれていたとしたら、ヤセ型の中には、病気の人が必要以上に多くカウントされてしまいます。
これは、ヤセているから病気になったのではなく、病気や栄養不良だからヤセているのです。病気でヤセた人を除くためには、少なくとも、調査時点の2 年前から体重変化がな招い人たちを対象に選ばなければならないでしょう。つまり、今の標準体重の出し方では「ヤセているから病気になる」とはいえないのです。

喫煙の問題「タバコの害でヤセた人がいないとも限らない」

「禁煙をやめたら太った」ということをよく耳にします。これは、タバコが胃腸系に影響して消化吸収を悪化させ、太りにくくするためです。
また、タバコが健康に及ぼす害は、肺ガンや狭心症など、みなさんご存じのとおりです。タバコを吸っている人は、太りにくく病気になりやすいということがいえるでしょう。つまり、ヤセ型の人に、喫煙で病気になった人が多く含まれている可能性があります。標準体重は、喫煙者、非喫煙者を分けて考える必要があるでしょう。

対象者の問題「平均年齢が高すぎる」

人間ドック受診者や、生命保険加入者は、ある年齢以上の人に限られてしまいます。ということは、標準体重を決めるもとになる対象者は、すでに中年太りが始まっている人たちが多いのです。
つまり、余分な脂肪がついてしまっている人たちに対する標準体重は、真の標準体重とはいえないかもしれません。少なくとも、若い人にはあてはまらないのではないでしょうか。

米、英の最新研究「標準体重では太りすぎ」

このような問題点を含んだ「標準体重」は、本当に健康な体重なのだろうか? 日常の外来診療において、特に標準体重以下の糖尿病患者さんに対する指導には疑問を持っていました。このような患者さんには、糖尿病でありながら、標準体重まで太りなさいと指導しなければならないことになるからです。ところが、最近イギリスとアメリカの権威ある医学雑誌「ニューイングランドジャーナルオブメディスン」と「JAMA」にあいついで、体重と死亡率に関する論文が発表されました。

  1. 18歳のときからどのくらい体重が変化しているかも桐べていること
  2. 病気でヤセた人、すでに病気だった人を除外するため、研究を始めた最初の4年間に体重が変化した人や死んだ人を除いていること

喫煙者を除いていること

標準体重に対する疑問点にほとんど答えてくれているのです。その結果、BMIが19以下(身長が156cmなら46.2kg) の女性の死亡率が一番低く、また、18歳のときより体重が増加するほど、死亡率が高くなりました。「BMIが19」とは、今までの標準体重の基準では「ヤセ」に入ります。
つまり、すでに病気だった人や喫煙者を除いて長期間観察すると、従来の標準体重の範囲内の人よりヤセ型の方が死亡率が低くなり、また、18歳のときから体重が増え、脂肪率が上がるほど、死亡率も高くなるということです。現時点での標準体重だけを問題にしてくつがえきた今までの考え方を覆す、画期的かつ驚くべき研究成果が現れたのです。このことは、最も健康であることを表すはずの「標準体標」が、何の意味もなさない数字に成り下がっている、ということを意味するのです。

医師が肥満患者にダイエット指導をするときに参考にする体重は、標準体重のほかに、その人の18歳(男性では20歳) 頃の体重です(もちろん、この頃から太っていた人は別)。
なぜなら、1人ひとり違う人間の体を、ただ同じ身長であるというだけでひとくくりにすることには、どうしてもムリがあり矛盾が生じてしまうためです。
体の成長が完了し、一番行動的な頃の体重こそが、その人にとって最も適正なべスト体重です。そして、その後増えた体重は筋肉や骨格ではなく、すべて脂肪でしかありません。
だから、18歳頃の体重が、その人の本来の理想体重になるのです。こういう考え方から減量指導を続けてきた私にとっては、「18歳以降に体重が増えることの危険性」が示されたことは、深く心にしみました。

また、若い頃、標準体重よりも体重が軽かったが、非常に健康な人がいるとします。ヤセぎみだったこの人が、中年以降に太り、標準体重となったところで糖尿病になりました。
この場合、現時点が標準体重ですから、減量させなくてもよいのでしょうか?
それとも健康だった若い頃の体重にまで減らさなければならないのでしょうか?そんなときにぶつかったのが「脂肪体重」 なの体重を計るだけでなく、脂肪率計を使って体脂肪率を測定するようになると、標準体重を超えない糖尿病患者の存在が解けてきいちようました。
こうした人たちは、一様に体脂肪率が高かったのです。つまり、体重は重くなくても、体重に占める脂肪の重さ(脂肪体重) が多かったわけです。同じ身長で、同じ体重の人でも、体重の中身、脂肪率の割合は変わってきます。たとえば、「私は標準体重以下ですから肥満ではありません」と自分で言い切った人の体脂肪率が、ゆうに30% を超えていた、というケースは決して珍
しくはありません。

なぜ「体脂肪率30%」という数値を問題にするか。実はここが非常に重要で、この30% を境に、成人病の発痛率が急激に高くなるのです。標準体重以下でも、体脂肪率が30%以上ある人がかなりの割合でいるらしいことは、その後の診療の中からも次第にハッキリしてきました。
つまり、体重がどんなに軽くても、脂肪が多ければそれは「肥満」なのです。たとえ標準体重でも、これではダイエットをしてもらわなければならない。そもそも、若い女性の平均体重が標準体重を下回っているということは、半数以上の人にとっては、標準体重はすでに肥満している状態なのではないか?

標準体重の許容範囲への疑問と、18歳以降に体重を増やすことへの警告は、どちらもそれまでの「肥満」の再定義を、事実をもって証明してくれたかのようです。

最近の内科学の傾向として、肥満を体重だけではなく、脂肪率や今までの体重の変化でもとらえようとする動きが頭をもたげつつあります。
これは、肥満度を、標準体重という固定された数値でくくってしまおうという従来の考え方を卒業し、もっと1人ひとりの人生と、ニーズに合わせた目標を設定し、問題点を発見しようとする考え方と言ってよいでしょう。
人間の体は、胴体に頭や手足がついています。手足が長い人もいれば、頭が大きい人もいるでしょう。そもそも、身長と体重による簡単な計算式だけから、個々の理想的な体重がわかるわけがないのです。こうなると、今までは、標準体重以下または標準体重プラス10%以内で、「ふつう」という結果を手にして、安心していた人たちの中に、「体重は標準以内ではあるが、脂肪率が高いため、肥満である」という人たちがかなり増えてくることでしょう。
つまり「かくれ肥満」の出現です。かくれ肥満は、外見があまり肥満していないため、他人から指摘されることも、自覚すひそることもないまま、密かに成人病を進行させている可能性が大いにあります。成人病の特徴として、初期にはまったく症状が出ないことを考えると、かくれ肥満者のいかに多くが将来発病するか、想像もつきません。

厚生省の調べによると、中年女性の肥満は20~25% にすぎません。しかし体脂肪率の面から考えると、さらに多くの肥満者がいると考えられます。かくれ肥満者がどのくらいの割合でいるかは、現時点ではまったくわかりませんが、こうした人たちを1人でも多く発見することが、将来の成人病患者を一人でも減らすことにつながると、私は確信します。成人病は、生活習慣病です。毎日の生活の、ちょっとした積み重ねが病気を引き起こすのです。
逆に言えば、毎日の積み重ねで予防することもできるわけです。もちろんそれは、「かくれ肥満」も同様です。

今まであまり知られていなかった「かくれ肥満」のチェックの仕方、なぜかくれ肥満が生まれるか、その解消法・予防法などをわかりやすく説明し、徹底的に解消するための情報です。