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標準体重という落とし穴

標準体重内におさまっていれば大丈夫なのか?

健康や体重を意識している人なら、「標準体重」という言葉は聞いたことがあると思います。最近では、人間ドックや、会社や地域の健康診断における肥満の判定に必ず使われています。

「痩せ気味」だとか「普通」「肥満気味 などと表示されている、あれです。「普通」が標準体重の範囲内です。この枠はけっこう広いですから、1ちょっと太ったかきと思っても、まだまだ標準範囲内で、「なんとかクリアー」などという場合も多いと思います。

では、この標準体重、どのようにして決められたのでしょうか?。その身長において一番病気にかかりにくく、また、最も死亡率の低い体重、という考えで決められたものなのです。痩せ気味、肥満気味の判定はなんとなくデブ指標のように感じますがそうではないのです。間ドックや、健康診断受診者、あるいは生命保険加入者についての数多くの調査成績をもとにして作られました。標準体重を考える上で、世界共通のものさしとして、「BMI」というものがあります。BMIとは、体重(kg)を身長(m) の2乗で割った体格指数のことです。
BMIを実際に計算する場合、156cmの人であれば

身長156cm、66kgの人であればBMIは52÷(1.56×1.56)=21.4

です。156cmの人では1.56×1.56×22=53.5kgとやや重めの体重になります。

体重による肥満度判定例(身長156cmの人の場合)

痩せ 正常範囲 肥満ぎみ 肥満
48.2kg未満 48.2kg以上~58.8kg未満 58.8kg以上~64.2kg未満 64.2kg以上

この体重からプラスマイナス10% 以内を正常範囲、10% 以上20%未満を肥満ぎみ、20%以上を肥満、マイナス10%以下を痩せ、と判断します。156cmの人の例では、以下のようになります。この表を見ると、「かなり太めでも正常の範囲なんだと感じる方が多いでしょう。
しかし、1000人の日本女性の統計によると、若い女性の平均BMIは20.5(156cmなら49.8kg) でした。となると実際は、約6割の人が、今よりもっと太らないと標準体重にならないのです。
多くの若い女性がヤセたがっているのに、健康のために太れ、ということになってしまうなんて、ヘンな話だと思いませんか?

また、過激なダイエットで急激にヤセたりしないかぎり、若い女性には、ヤセ型の人に貧血などの病気が多いということもありませんでした。りかん病気の雁患率や死亡率が最低になるようにして求められた標準体重は、一見たいへん論理的ですが、実はその陰で、以下に述べるようなさまざまな問題を含んでいるのです。

体重の中身の問題「筋肉と脂肪の割合を無視している」

肥満は、本当は体重が重い状態をいうのではありません。体の中の「脂肪」が非常に多くなった状態が、肥満なのです。同じ体重でも、脂肪の割合(脂肪率) は人により異なります。体重が重くても筋肉質の八は肥満ではありませんが、ヤセていても脂肪率が高ければ肥満です。それなのに、今の標準体重では、その脂肪率を無視し「体重」だけしか問題にしていないのです。

脂肪が多いかどうかは、脂肪率計で計れますが、そのほかにも、18歳(男性では20歳)のときの体重が参考になります。骨格や筋肉は、よほど運動を続けて鍛えていない限り、18歳(男性では20歳) 以降は増えないので、18歳以降増加した体重は、ほとんど脂肪が増えた分なのです。つまり、18歳の時の体重より現在の体重がどれほど増えたかが、増えた脂肪量の重要なめやすとなります。

体重の変化の問題「一時点の体重だけで判断している」

標準体重を最も健康とすると、それよりも軽い人は不健康ということになりますね。ところが、標準体重を決めるための人間ドックや健康診断による調査では、あくまでも、その時点での瞬間的な体重しかわかりません。
したがって、計量前後に急激に体重が変化している人がいても、その推移が反映されないことになってしまいます。たとえば、標準体重でヤセ型とされる人の中に、病気や過激なダイエットで、最近急激にヤセてきた人が含まれていたとしたら、ヤセ型の中には、病気の人が必要以上に多くカウントされてしまいます。
これは、ヤセているから病気になったのではなく、病気や栄養不良だからヤセているのです。病気でヤセた人を除くためには、少なくとも、調査時点の2 年前から体重変化がな招い人たちを対象に選ばなければならないでしょう。つまり、今の標準体重の出し方では「ヤセているから病気になる」とはいえないのです。

喫煙の問題「タバコの害でヤセた人がいないとも限らない」

「禁煙をやめたら太った」ということをよく耳にします。これは、タバコが胃腸系に影響して消化吸収を悪化させ、太りにくくするためです。
また、タバコが健康に及ぼす害は、肺ガンや狭心症など、みなさんご存じのとおりです。タバコを吸っている人は、太りにくく病気になりやすいということがいえるでしょう。つまり、ヤセ型の人に、喫煙で病気になった人が多く含まれている可能性があります。標準体重は、喫煙者、非喫煙者を分けて考える必要があるでしょう。

対象者の問題「平均年齢が高すぎる」

人間ドック受診者や、生命保険加入者は、ある年齢以上の人に限られてしまいます。ということは、標準体重を決めるもとになる対象者は、すでに中年太りが始まっている人たちが多いのです。
つまり、余分な脂肪がついてしまっている人たちに対する標準体重は、真の標準体重とはいえないかもしれません。少なくとも、若い人にはあてはまらないのではないでしょうか。

米、英の最新研究「標準体重では太りすぎ」

このような問題点を含んだ「標準体重」は、本当に健康な体重なのだろうか? 日常の外来診療において、特に標準体重以下の糖尿病患者さんに対する指導には疑問を持っていました。このような患者さんには、糖尿病でありながら、標準体重まで太りなさいと指導しなければならないことになるからです。ところが、最近イギリスとアメリカの権威ある医学雑誌「ニューイングランドジャーナルオブメディスン」と「JAMA」にあいついで、体重と死亡率に関する論文が発表されました。

  1. 18歳のときからどのくらい体重が変化しているかも桐べていること
  2. 病気でヤセた人、すでに病気だった人を除外するため、研究を始めた最初の4年間に体重が変化した人や死んだ人を除いていること

喫煙者を除いていること

標準体重に対する疑問点にほとんど答えてくれているのです。その結果、BMIが19以下(身長が156cmなら46.2kg) の女性の死亡率が一番低く、また、18歳のときより体重が増加するほど、死亡率が高くなりました。「BMIが19」とは、今までの標準体重の基準では「ヤセ」に入ります。
つまり、すでに病気だった人や喫煙者を除いて長期間観察すると、従来の標準体重の範囲内の人よりヤセ型の方が死亡率が低くなり、また、18歳のときから体重が増え、脂肪率が上がるほど、死亡率も高くなるということです。現時点での標準体重だけを問題にしてくつがえきた今までの考え方を覆す、画期的かつ驚くべき研究成果が現れたのです。このことは、最も健康であることを表すはずの「標準体標」が、何の意味もなさない数字に成り下がっている、ということを意味するのです。

医師が肥満患者にダイエット指導をするときに参考にする体重は、標準体重のほかに、その人の18歳(男性では20歳) 頃の体重です(もちろん、この頃から太っていた人は別)。
なぜなら、1人ひとり違う人間の体を、ただ同じ身長であるというだけでひとくくりにすることには、どうしてもムリがあり矛盾が生じてしまうためです。
体の成長が完了し、一番行動的な頃の体重こそが、その人にとって最も適正なべスト体重です。そして、その後増えた体重は筋肉や骨格ではなく、すべて脂肪でしかありません。
だから、18歳頃の体重が、その人の本来の理想体重になるのです。こういう考え方から減量指導を続けてきた私にとっては、「18歳以降に体重が増えることの危険性」が示されたことは、深く心にしみました。

また、若い頃、標準体重よりも体重が軽かったが、非常に健康な人がいるとします。ヤセぎみだったこの人が、中年以降に太り、標準体重となったところで糖尿病になりました。
この場合、現時点が標準体重ですから、減量させなくてもよいのでしょうか?
それとも健康だった若い頃の体重にまで減らさなければならないのでしょうか?そんなときにぶつかったのが「脂肪体重」 なの体重を計るだけでなく、脂肪率計を使って体脂肪率を測定するようになると、標準体重を超えない糖尿病患者の存在が解けてきいちようました。
こうした人たちは、一様に体脂肪率が高かったのです。つまり、体重は重くなくても、体重に占める脂肪の重さ(脂肪体重) が多かったわけです。同じ身長で、同じ体重の人でも、体重の中身、脂肪率の割合は変わってきます。たとえば、「私は標準体重以下ですから肥満ではありません」と自分で言い切った人の体脂肪率が、ゆうに30% を超えていた、というケースは決して珍
しくはありません。

なぜ「体脂肪率30%」という数値を問題にするか。実はここが非常に重要で、この30% を境に、成人病の発痛率が急激に高くなるのです。標準体重以下でも、体脂肪率が30%以上ある人がかなりの割合でいるらしいことは、その後の診療の中からも次第にハッキリしてきました。
つまり、体重がどんなに軽くても、脂肪が多ければそれは「肥満」なのです。たとえ標準体重でも、これではダイエットをしてもらわなければならない。そもそも、若い女性の平均体重が標準体重を下回っているということは、半数以上の人にとっては、標準体重はすでに肥満している状態なのではないか?

標準体重の許容範囲への疑問と、18歳以降に体重を増やすことへの警告は、どちらもそれまでの「肥満」の再定義を、事実をもって証明してくれたかのようです。

最近の内科学の傾向として、肥満を体重だけではなく、脂肪率や今までの体重の変化でもとらえようとする動きが頭をもたげつつあります。
これは、肥満度を、標準体重という固定された数値でくくってしまおうという従来の考え方を卒業し、もっと1人ひとりの人生と、ニーズに合わせた目標を設定し、問題点を発見しようとする考え方と言ってよいでしょう。
人間の体は、胴体に頭や手足がついています。手足が長い人もいれば、頭が大きい人もいるでしょう。そもそも、身長と体重による簡単な計算式だけから、個々の理想的な体重がわかるわけがないのです。こうなると、今までは、標準体重以下または標準体重プラス10%以内で、「ふつう」という結果を手にして、安心していた人たちの中に、「体重は標準以内ではあるが、脂肪率が高いため、肥満である」という人たちがかなり増えてくることでしょう。
つまり「かくれ肥満」の出現です。かくれ肥満は、外見があまり肥満していないため、他人から指摘されることも、自覚すひそることもないまま、密かに成人病を進行させている可能性が大いにあります。成人病の特徴として、初期にはまったく症状が出ないことを考えると、かくれ肥満者のいかに多くが将来発病するか、想像もつきません。

厚生省の調べによると、中年女性の肥満は20~25% にすぎません。しかし体脂肪率の面から考えると、さらに多くの肥満者がいると考えられます。かくれ肥満者がどのくらいの割合でいるかは、現時点ではまったくわかりませんが、こうした人たちを1人でも多く発見することが、将来の成人病患者を一人でも減らすことにつながると、私は確信します。成人病は、生活習慣病です。毎日の生活の、ちょっとした積み重ねが病気を引き起こすのです。
逆に言えば、毎日の積み重ねで予防することもできるわけです。もちろんそれは、「かくれ肥満」も同様です。

今まであまり知られていなかった「かくれ肥満」のチェックの仕方、なぜかくれ肥満が生まれるか、その解消法・予防法などをわかりやすく説明し、徹底的に解消するための情報です。