糖尿病には糖質制限食が唯一無二の食事療法

こうしたことをふまえれば、糖尿病の治療にはデンプン・砂糖などの糖質に注目する必要があります。糖質の摂取をおさえれば食後血糖値の上昇がなくなりますから、インスリンの追加分泌もはとんど必要なく、すい臓の負担も少なくてすみます。

なお、すでに糖尿病を発症している人は、インスリンを分泌するすい臓のβ細胞がその時点で1〜2割死んでいることが多いのです。適切な食事療法(糖質制限食)以外に、慢性すい不全ともいえる状態を防ぐ方法はないことを、肝に銘じなくてはなりません。

糖質を摂れば必ず食後高血糖を起こしβ細胞にダメージを与えるので、β細胞は年単位で徐々に死滅していきます。

糖質制限食を続けても低血糖になる心配はありません。糖質を制限すると、脂肪は常に燃えるようになり、肝臓ではアミノ酸や乳酸などから常に糖新生(新たにブドウ糖をつくること)をしています。ビーフステーキを食べている最中にも脂肪は分解されていますし、糖新生も行われています。

中性脂肪が分解すると脂肪酸とグリセロールになります。脂肪酸はそのまま、心筋や骨格筋など体細胞のエネルギー源となります。グリセロールは糖新生の原料になります。また、脂肪酸は肝細胞内で代謝されて、ケトン体がつくられます。

ケトン体は脳細胞をはじめ、肝細胞と赤血球以外のすべての細胞のエネルギー源となります。糖質制限食中や断食療法中は、ケトン体が多くつくられます。肝臓の糖新生は、空腹時には誰でも日常的に行われています。糖質制限食なら、食事中にも糖新生が行われています。

力ロリー制限食で糖尿病が増えてしまったある町の悲劇

糖尿病食を続けても糖尿病がよくならない…それをはっきり裏づけているのが、久山町の研究データです。

久山町は、福岡県福岡市の東に隣接する人口8000人余りの町です。この町の年齢・職業構成は過去40年以上にわたり全国平均とよく一致しており、住民の栄養摂取状かたよ況も国民栄養調査の成績とはとんど変わりありません。

すなわち、久山町の住人は、偏りがはとんどない、標準的な日本人のサンプル集団といえます。九州大学医学部が1961年から継続して、久山町の40歳以上の住民を対象に研究を続けています。

5年に1度の健康診断の受診率は約80% もあり、他の市町村に比べて高いです。また、死後の剖検率(死亡した患者数に対して、病理解剖された患者数の割合)も82% と高く、精度の高い研究の支えとなっています。

1961年当時、日本では脳卒中死亡率の高さが問題となっていましたが、久山町の研究により、高血圧が脳出血の最大の原因であることが判明しました。その後、久山町では、糖尿病の発症予防が最重要の研究テーマとなっています。その結果、糖尿病は心筋梗塞、脳梗塞、悪性腫瘍、アルツハイマー病などの発症要因となることが判明しました。

その久山町で1988年と2002年に、40~79歳の住民の約8割を対象に、糖尿病の有病率調査が行われました。

その結果は糖尿病の発症予防は見事に失敗し、明らかな増加が認められたのです。研究責任者の九州大学・清原教授は、200 7年7月27日の毎日新聞朝刊で「1988年以後、運動や食事指導など手を尽くしたのに糖尿病は増える一方。どうすれば減るのか、最初からやり直したい」とのコメントを述べておられます。

実際、14年間の努力にもかかわらず、糖尿病と診断された人は男性で15.0 % から23.6% へ、女性で9.9 % から柑13.4 % へ増加しています。

また2 0 0 2年の調査では、成人男性の約6割が糖尿病とIGT・IFGと診断されるという、とんでもない数字に増えています。

IGTは糖尿病前段階の食後高血糖で、IFGは糖尿病前段階の空腹時高血糖です。厚生労働省の国民健康・栄養調査によれば、2002年における40歳以上日本人の糖尿病の割合は、男性が15.6% 、女性が8.1% で、久山町より低い数字でした。

厚労省の調査では、糖尿病が強く疑われる人の定義は「ヘモグロビンA1C 6.1% 以上、または質問票で「現在糖尿病の治療を受けている」と答えた人で、久山町のように75 g 経口ブドウ糖負荷試験を行っているわけではないので、同列に比べることはできません。

しかし、久山町で実施された14年間の食事指導・運動指導にもかかわらず、糖尿病が増えたのはまぎれもない事実なのです。

このように単純比較はできないものの、食事指導をしていない日本全体のデータよりも、食事指導を徹底した久山町のデータのはうが、糖尿病の増加率も有病率も明らかに高いというパラドックス(逆説) が起こっています。

久山町で指導された食事療法は、日本糖尿病学会推奨のカロリー制限食(糖質60% 、脂質20% 、タンパク質20%) です。こうしたカロリー制限の高糖質食を行う限り、運動療法を取り入れても糖尿病の増加をくい止められないということが、久山町の研究で証明されたのです。

それだけでなく、食事指導をした久山町のデータのはうが増加率も有病率もはるかに高いということは、常識で考えれば「カロリー制限重視の高糖質食で糖尿病が増えた」としか言いようがありません。

「戦後、炭水化物摂取が減り続け、脂質摂取が増え続けて糖尿病や肥満が激増した」というのが、医師や栄養士の常識・定説として信じられてきました。

しかしグラフから明らかなように、炭水化物の比率は1980年頃まで急速に減少したあと、減り方が緩やかになり、1997年を底に緩やかな増加に転じています。脂質は逆に1980年頃まで急速に増加したあと、増え方が緩やかになり、1997年をピークに緩やかな減少に転じています。

このように従来の常識・定説は誤った神話だったのです。そして、この間も、糖尿病と肥満は増え続けています。その理由として、噂好飲料や精製炭水化物、ジャンクフードなどGI(血糖指数)の高い食品が増えたことと、運動不足・エアコンの普及などが関係していると思います。

私はアカポリ糖ケアで血糖値、ヘモグロビンA1Cを下げた(糖尿病に効果)
https://record-p.com/acaporitoucare/

 

糖尿病食を続けても糖尿病がよくならない

糖尿病は、インスリンの作用不足のために糖質・脂質・タンパク質の代謝に異常をきたし、慢性的な高血糖の結果、特有の合併症をもたらす病気と定義されています。

糖尿病の食事療法として、日本では「男性は1600~1800キロカロリー、女性は1200~1400 キロカロリー」というように画一的なカロリー制限によって対応しています。

しかし、3大栄毒素のうち血糖を急上昇させるのは糖質だけなので、カロリー制限よりもどんな食べ物を摂るかのはうがはるかに重要です。カロリー制限でつらい思いをしていても、糖尿病の人が糖質を1 人前摂ると、血糖は必ず200mg/dl以上の異常高値になります。

従来の糖尿病食(高糖質食) では食後高血糖は絶対に防げません。一方、脂質やタンパク質を摂っても血糖は上昇しません。糖質制限食なら食後高血糖は生じないのです。