2020年 10月 の投稿一覧

糖質制限食は、アトピー・花粉症などのアレルギー疾患対策に

糖質制限食を実践しておられる糖尿人のなかには、アトピー性皮膚炎を合併されている方々がおられます。そういう場合、糖尿病治療のために糖質制限食を続けているうちわずらに、乾燥肌がしっとりしてきて、長年患っていたアトピー性皮膚炎がよくなった人もいます。

アトピー性皮膚炎が糖質制限食だけで治るとはいえませんが、少なくとも乾燥肌はよくなるようです。また同じように、長年患っていた花粉症が出なくなった人もいます。

ある方の例ですが、小学生時代からのスギ花粉症で、年々症状がきつくなっていったそうです。2004年の花粉症シーズンには耳鼻科医のお勧めどおり、1ヶ月前から抗アレルギー剤を内服し、点眼薬、点鼻薬も開始して準備万端撃えていたといいます。

しかし、そうした努力にもかかわらず、例年にも増してくしゃみ・鼻水・鼻づまりのフルコースで、息も絶え絶えで、仕事も手につかない状態でした。

そこで漢方煎じ薬を内服したところ、くしゃみ・鼻水・鼻づまりがぴったり止まり、奇跡のように改善したのです。

この煎じ薬は、はっきり言ってとてもまずいのですが、背に腹はかえられずシーズン中は飲み続けました。

その年の冬からは、花粉症予防薬の漢方エキスを飲み、翌シーズン中は煎じ薬に切り替えて、05年、06年ははとんど症状が出ずに済みました。そして2006年からは、一念発起してスーパー糖質制限食を始めました。

すると、その年から2010年まで、まったく薬なしで、漢方煎じ薬もなしで、花粉症予防の漢方エキスだけで、花粉症ははぼフリー状態となりました。

2011年も1月からアレルギー予防の漢方薬を内服し、もちろんスーパー糖質制限食も継続し、漢方煎じ薬はなしで花粉症の症状はいっさい出ませんでした。改善の度合いには個人差があるようで、100% 近い改善から50% くらいの人、あまり変わらない人もいます。

イヌイットが4000年間、伝統的な食生活(主食は生肉・生魚でスーパー糖質制限食)を続けていた頃は、アレルギー疾患ははとんどありませんでした。したがって糖質制限食でアレルギー疾患の改善や予防は期待できると思います。

アレルギーは腸で治す

米国の医学雑誌で証明されたダイエット効果

肥満の原因が糖質の摂りすぎにあるということは、説明したとおりです。ここでは、糖質制限食のダイエット効果を証明した最近の疫学研究を紹介しておきましょう。

食事療法のダイエット効果についてはさまざまな説が飛び交っていましたが、『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』2008年7月17日号に掲載され、長年の論争に決着をつけたと思います。

れはイスラエルの322人を対象に、脂肪制限食、地中海食、低炭水化物食の3グループに分けて、それぞれのダイエット効果を2年間追跡した研究です。

「低炭水化物食(糖質制限食) がもっとも体重を減少させ、善玉コレステロールを増加させた」というのが結論です。

  1. 低脂肪法(カロリー制限あり)
  2. オリーブ油の地中海法(カロリー制限あり)
  3. 低炭水化物法(カロリー制限なしのアトキンスダイエット)

3 つの食事法を追跡調査した結果、2年後の体重減少幅の平均は、

  1. 低脂肪法 2.9kg
  2. 地中海法 4.4kg
  3. 低炭水化物法 4.7kg

となり、カロリー制限なしのハンディにもかかわらず、低炭水化物法(糖質制限食)がもっとも減少していました。

また、善玉のHDLコレステロールも増えていました。もう1つは『米国医師会雑誌』2007年3 月号に掲載された論文です。

この研究は3 1 1人の女性をダイエット法ごとに4 つのグループに分けて、1年間の体重減少効果をみたものです。これら4種のダイエット法は、いずれも米国でポピュラーなものです。

  1. アトキンスダイエット(低炭水化物食)
  2. ゾーンダイエット(タンパク質・炭水化物・脂質の比率を40 :30:30に)
  3. ラーンダイエット(高炭水化物・低脂肪食)
  4. オーニッシュダイエット(炭水化物・タンパク質・脂質の比率を70 :20 :10 に)

結果は、1のアトキンスダイエットがもっとも体重を減少させ、善玉のHDL コレステロールを増やし、中性脂肪を減らすことが明らかとなりました。

このダイエット法は私たちの糖質制限食と基本的な考えは同じで、1年間で平均4.7kgの減少です。その他の結果は、ゾーンダイエット1.6kg減、ラーンダイエット2.6kg減、オーニッシュダイエット2.2 kg減です。

糖尿病には糖質制限食が唯一無二の食事療法

こうしたことをふまえれば、糖尿病の治療にはデンプン・砂糖などの糖質に注目する必要があります。糖質の摂取をおさえれば食後血糖値の上昇がなくなりますから、インスリンの追加分泌もはとんど必要なく、すい臓の負担も少なくてすみます。

なお、すでに糖尿病を発症している人は、インスリンを分泌するすい臓のβ細胞がその時点で1〜2割死んでいることが多いのです。適切な食事療法(糖質制限食)以外に、慢性すい不全ともいえる状態を防ぐ方法はないことを、肝に銘じなくてはなりません。

糖質を摂れば必ず食後高血糖を起こしβ細胞にダメージを与えるので、β細胞は年単位で徐々に死滅していきます。

糖質制限食を続けても低血糖になる心配はありません。糖質を制限すると、脂肪は常に燃えるようになり、肝臓ではアミノ酸や乳酸などから常に糖新生(新たにブドウ糖をつくること)をしています。ビーフステーキを食べている最中にも脂肪は分解されていますし、糖新生も行われています。

中性脂肪が分解すると脂肪酸とグリセロールになります。脂肪酸はそのまま、心筋や骨格筋など体細胞のエネルギー源となります。グリセロールは糖新生の原料になります。また、脂肪酸は肝細胞内で代謝されて、ケトン体がつくられます。

ケトン体は脳細胞をはじめ、肝細胞と赤血球以外のすべての細胞のエネルギー源となります。糖質制限食中や断食療法中は、ケトン体が多くつくられます。肝臓の糖新生は、空腹時には誰でも日常的に行われています。糖質制限食なら、食事中にも糖新生が行われています。