ご飯を1日3杯以上食べると糖尿病になりやすい

糖質の摂りすぎと糖尿病との関係は、日本でも国立がん研究センターなどが指摘しています。読売新聞にも、「ご飯1日3杯の女性→糖尿病リスク1.5倍」という興味深い記事が掲載されています。

ご飯1日3杯の女性→糖尿病リスク1.5倍

1日にごはんを3杯以上食べる日本人女性は糖尿病の発症率が高いことが、国立がん研究センターなどによる6万人規模の追跡調査でわかった。12日、発表した。炭水化物を多量に摂取すると発症率が高まることは知られているが、米食と糖尿病との関連を大規模に調べたのは初めて。岩手や長野、茨城、沖純など8県在住の45~74歳の男女約6万人を対象に、1990年代初めから5年間にわたり追跡調査した。

このうち1103人(男性625人、女性478人) が糖尿病になった。

米飯の摂取量との関連を調べたところ、女性の場合、1 日に茶わん3杯を食べるグループは、糖尿病の発症率が1杯のグループに比べて1・舶倍に、4杯以上だと1 .65倍になっていた。

ただ、肉体労働やスポーツを1 日1時間以上行うグループは、摂取量と発症率に目立った関連はなかった。男性の場合、女性に比べて摂取量との関連は小さいが、運動しない人の発症率は高まる傾向にあった。

米を多くとる女性の生活習慣などが糖尿病を引き起こしている可能性もあり、今回の調査からは、米が糖尿病の原因になっているとは断定できない。データを解析した国立国際医療研究センターのチームは「米飯を含む食習慣全体をバランスよくすることが大切だ」と勧めている。

2010年6月、ハーバード大学公衆衛生大学院の研究チームが「白米の摂取は2型糖尿病の発症リスクを高める」という研究結果を報告したのは記憶に新しいところです。この研究によれば、ふだん食べている白米を玄米や全粒粉のパンに置き換えるだけで糖尿病の発症リスクを減らせると言います。糖質をおさえた低糖質パンなら尚いいでしょう。

この国立がん研究センターによる報告も、米飯というのははとんどが白米と考えられます。白米を一定量以上食べると、2型糖尿病の発症リスクが高まることは、日米の報告で明らかなようです。

もっとも、先ほどの記事では「米を多くとる女性の生活習慣などが糖尿病を引き起こしている可能性もあり、今回の調査からは、米が糖尿病の原因になっているとは断定できない」と添えられていますが、これはかなり苦しい言い訳ですね。

たしかに断定はできないでしょうが、米を多く食べる女性がそうでない女性に比べて変わった生活習慣(極端な運動不足など) を共有している可能性は、いまの日本でははとんどないと思います。6万人という大人数が対象ですから、そのような偏りは発生しにくいといえます。データを解析した国立国際医療研究センターとしても、「米を食べると糖尿病になる」とは言いづらくて「米飯を含む食習慣全体をバランスよくすることあいまいが大切だ」という、歯切れのよくない曖昧な結論になったのでしょう。

一方、「肉体労働やスポーツを1 日1時間以上行うグループは、摂取量と発症率に目立った関連はなかった」という事実は、すっきりしています。運動が、米飯の大量摂取の弊害(2型糖尿病の発症リスク) を減らしたことは、間違いないようです。

実際、明治や戦前の日本人は、総摂取カロリーの7〜8割が米飯(主に白米) だったにもかかわらず、2型糖尿病がはとんどありませんでした。当時の日本人の日常生活における運動量は、現代人の10倍近かったと思います。結論としては、運動量が現代人くらいだと、白米を一定量以上食べると、とくに女性の場合は2型糖尿病のリスクになるということです。

貧しい人たちが 肥満になりやすいのは

日本ではカロリー制限食がいまだに重視されていますが、欧米では脂質より糖質を制限するはうが肥満の防止効果が高いという認識が一般にも広まってきています。

それを示す面白い例が、ニューヨーク市と米飲料業界との間で起こった「ソーダ戦争」です。

ニューヨーク市、炭酸飲料狙い撃ち 貧困層用クーポンで購入禁止案市長VS業界

肥満の原因とされる砂糖入り炭酸飲料などの消費量を抑えて、医療費を抑制しようニューヨークのブルームバーグ市長が、そんな試みを打ち出しました。

一方、飲料業界は「無用な干渉でしかない」と猛反発し、「ソーダ戦争」の様相を呈していました。市の提案は、月当たりの世帯収入が2400ドル(約20万円、4人家族の場合) 未満の低所得者層に配られる米政府の食糧クーポン券で、炭酸飲料などの砂糖入り清涼飲料水を買えなくするというものでした。

市によると、人口当たりの糖尿病患者は、低所得者が住む地域では、高所得者層地域の4倍。1日に1回以上炭酸飲料を飲む人が38%以上いる地域は、クーポン券利用者が多い地域と重なり、肥満率が30% 以上に達するというのです。

このため市長は、クーポン券で炭働飲料を買えなくすれば、より栄養価が高い食料品にお金がまわるようになり、肥満や糖尿病を抑えられると訴えました。

これに対し、米国飲料協会は「砂糖入り飲料水のカロリーだけが特別なわけではない」として、狙い撃ちに反発するコメントを発表しました。

「恵まれない人たちにとって不公平な措置だ」と主張し、一歩も引かない姿勢でした。

バーなどの屋内施設からたばこを追放し、ファストフード店にカロリー表示を義務づけるなど、次々と健康政策を打ち出してきたブルームバーグ市長にとって、肥満対策は負けられない戦いでした。

しかし、飲料業界は大きな政治力を持っており、今後、市の提案が米政府に認められるかどうかは、不透明です。買い物客の8割前後が、クーポン券利用者だというブルックリン区のスーパーで働くスタンリー・パンフィールさん(27) は「市長の考えは面白いかもしれないけど、どっちにせよ、みんなソーダを買うよ」と効果に懐疑的でした。

肥満は、過去には「ぜいたく病」と言われていましたが、最近は貧困層に多いという事実がはっきりしてきました。これは米国に限った話ではなく、世界で共通のことと考えられます。

先進国でも貧困層が簡単に手に入れることができる食料は、糖質が原料のパンやめん類や米飯、砂糖たっぷりの清涼飲料水、さらにポテトチップスや甘い菓子パンやクッキーやケーキ…。

肉や魚などの高脂質・高タンパク食はこれらに比べると高級な食材で、箕囲層には手に入りにくいのです。

米国のソーダとは、コーラなど砂糖がたくさん入った清涼飲料水全般を含みます。2009年、米国飲料協会が公立小中学校におけるエネルギー量(糖質)の多い清涼飲料水の発売を全面停止したのは、記憶に新しいところです。

普通にパンを食べて、飲み物を水やお茶にするのか、砂糖たっぷりの清涼飲料水にするのかでも、肥満率には大きな差があると思います。

米国南部の州は肥満者の割合がとくに高く、肥満とつながりのある糖尿病や高血圧症の割合も高いことが2004年に報告されています。どれい1862年のリンカーン大統領による「奴隷解放宣言」や1865年の南北戦争終結を経て、南部の州で奴隷の扱いを受けていた黒人は解放されました。

しかし、こうした背景から、南部諸州では貧しい黒人の比率が高いのです。2005年8月には、ハリケーン「カトリーナ」がルイジアナ州やミシシッピ州を襲い、多大な被害を出レました。

ルイジアナ州最大の都市ニューオリンズは、黒人街のはとんどが水没しました。ニューオリンズの住民の75% が黒人です。このとき米政府の救助活動のあまりの遅れに黒人差別であると暴動が起きたのは、いたましい記憶です。

肥満がもっとも深刻なのはミシシッピ州で、成人の29.5% が肥満と推計されました。ワースト2位は同じく南部のアラバマ州( 28.7% )、3位はウェストバージニア州(28.6%) です。

世界的にみて、糖尿病の人たちがもっとも多いのは中国とインドです。中国の多数を占める貧しい農民や、インドのスードラ階級の人びとは、基本的に安価な炭水化物以外は手に入りにくいのです。

世界最貧国の1 つ、バングラデシュでも糖尿病が激増しています。バングラデシュでサイクロンによる水害が発生したときも、先進国からの食料援助は、菓子パンやクッキーなど安価で保存のよい炭水化物でした。これからは、そうした貧しい国々で糖尿病がさらに増えていく可能性が高いでしょう。

 

脂肪を減らしても肥満が増えるという逆説

肥満や糖尿病の原因が、脂質ではなく糖質の摂りすぎにあることは、全米健康調査(男性)からも明らかになっています。

ある調査は総摂取カロリーに占める脂肪・糖質の摂取比率と肥満率との関係を調べたものです。1960年代は、脂肪悪玉説が文明国を席巻して、世界中で官民をあげて脂肪を減らそうという努力が始まりました。

米国でも、全米をあげて脂肪の比率を減らし続けて、30年間で36.9%1 32.8% と大きな成果をあげました。

ところが、脂肪は狙いどおりに減少したのに、肥満率は逆に倍増してしまったのです。糖尿病に至っては、1995年の800万人から2005年の2080万人へと、わずか10年間で2.5倍です。全米あげての脂肪減少作戦は、肥満防止にも、糖尿病予防にも、まったく役に立たなかったのです。

結局この間増加したのは、糖質の比率です。1971年の42.4%から2000年には49.0 % へと、6.6% も増加しています。つまり、全米健康調査のデータが示しているのは、糖質の摂りすぎこそが肥満や糖尿病の元凶だということです。

糖質制限食がどのような食事かで示すように糖質を減らして健康になるというものです。