ブドウ糖はもともと貴重なエネルギー源

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

さて、細胞がブドウ糖を取り込むためには、「糖輸送体」という特別なタンパク質が必要です。英語の頭文字からGLUT (グルット)と呼ばれ、現時点でグルットl〜グルット14まで確認されています。

このうち赤血球・脳・網膜の糖輸送体はグルット1で、脳細胞や赤血球の表面にあるため、血流さえあればいつでも血液中からブドウ糖を取り込めます。

それで赤血球や脳や網膜は、安静時にもブドウ糖を取り込めるわけです。これに対して筋肉細胞と脂肪細胞に特化した糖輸送体がグルット4 で、ふだんは細胞の内部に沈んでいるので、血流があってもほとんどブドウ糖を取り込めません。しかし激しい筋肉の収縮があると、細胞内に沈んでいたグルット4が細胞表面に移動してきて、血流からブドウ糖を取り込めるようになるのです。

歩行程度の軽い運動でも20〜30分間続けるとグルット4が細胞表面に移動してブドウ糖を取り込みます。そして糖質を食べて血糖値が上昇してインスリンが追加分泌されたときも、グルット4 が細胞表面に移動してブドウ糖を取り込みます。

グルット4がなぜこうした特殊な役割を担っているかといえば、人類が主に摂取していたのは脂質・タンパク質であり、糖質はたまにしか摂らない貴重なものだったからと考えられます。

グルットは進化の過程で突然変異をくり返しながら、ブドウ糖という貴重なエネルギー源を使う優先順位を確立していったのでしょう。

このように、体内に蓄えられているエネルギーを考慮すれば、人類は日常的には脂肪を燃やして生活し、いざ激しい動きをするときなどに、非常用としてブドウ糖を利用していたことがわかります。

人間は「ブドウ糖…グリコーゲン」と「脂肪酸…ケトン体」たくのシステムを巧みに使い分けて、700万年間生きてきたのです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*