次に、果糖と中性脂肪について考えてみます。果糖というのは果物に含まれる糖質の主成分ですが、実におもしろい性質を持っています。
果糖が中性脂肪を合成しやすい糖質であることは、以前から知られています。果物中の果糖は、糖輸送体のグルット5によって吸収されますが、血糖にはほとんど変わらずに肝臓まで運ばれ、ブドウ糖代謝系に入ります。
このとき果糖は、ブドウ糖よりすばやく代謝されるという特徴があります。また果糖は、肝臓で脂肪合成にかかわる酵素を活性化するため、とても中性脂肪に変わりやすいのです。
このように、果物の果糖は中性脂肪をためやすく肥満しやすい性質を持っており、現代では要注意食材といえます。
さて、それでは再び狩猟・採集時代の食生活を考えてみましょう。果物には果糖、ブドウ糖、ショ糖などの糖質が含まれています。10万年前や20万年前にアフリカの人類がたまの果物にありついたとき、2つのシステムが稼働したはずです。
- ブドウ糖やショ糖→血糖値少し上昇→インスリン少量追加分泌→グルット4が脂肪細胞表面に移動→ブドウ糖を取り込み中性脂肪に変えて蓄積。
- 果糖→インスリンとは無関係にグルット5 により吸収されて、肝臓に運ばれて速やかに中性脂肪を合成。
この2つのシステムは、農耕が始まる前の人類の食生活と生存競争において、きわめて重要な意味を持っていたと考えられます。
すなわち、中性脂肪を蓄えることは、ご先祖にとって、飢餓に備えるための唯一無二のセーフティーネットだったからです。
果糖がインスリンに依存せずに、肝臓でブドウ糖より速く代謝され中性脂肪に変わるのも、農耕前の人類にとってはとても大きな利点だったと考えられます。
体脂肪をある程度蓄えられるのが、現世人類の大きな特徴です。
とくに女性の乳房とお尻は、脂肪の蓄積装置として優れたものであり、7属23種のなかでホモ・サピエンスが唯一生き残った大きな理由の1 つといえます。
ごく普通の体型の女性なら、その体脂肪により、水さえあれば母子ともに2ヶ月くらいは生きられるという大きな優位性があるのです。
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