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脂肪は悪ではない 証明済み

このような現代の食生活は、肥満や生活習慣病にも深く関わっています。ところが肥満や生活習慣病の原因は糖質にあるという話をしても、すぐには信じてもらえません。しばらく「脂肪悪玉説」という誤った常識が信じられてきたため、頭を切り替えられない人が多いようです。

脂肪悪玉説というのは、脂肪を摂りすぎると肥満になりやすいし、コレステロールが増えて血管に詰まるので病気になりやすい、とくに動物性の脂は体に悪いから摂らないはうがいい、といった説です。

しかし、ここ数年の研究によって、脂肪悪玉説の誤りが明らかになっています。なかでもそれを決定づけたのは、米国における2 つの研究です。

lつは、米国の大規模介入試験(5万人弱の閉経女性を対象に、平均8年間にわたって追跡)において「脂質比率20% で強力に脂質制限をしたグループは、対照グループに比べて心血管疾患、乳ガン、大腸ガンのリスクが低下しなかった」ことが『米国医師会雑誌』2006年2月8日号で報告されました。

もうl つは、ハーバード大学のグループによる研究です。米国の女性看護師8 万2 802人を20年間追跡したところ、「炭水化物(糖質)が少なく脂肪とタンパク質が多い食事でも、冠動脈疾患のリスクは上昇しなかった」ことが『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』2 0 0 6年u月9日号で報告されました。

ここで紹介した2誌は世界でもっとも権威のある医学専門誌なので、当然、掲載される論文はきびしいチェックを通過した信頼性の高いものです。それらの論文で脂肪悪玉説が、少なくとも心血管疾患、乳ガン、大腸ガンにおいては根底から否定されたのです。

ブドウ糖のミニスパイクが生活習慣病の原因

空腹時血糖と食後血糖の差が大きいことを「ブドウ糖スパイク」と言います。この差が大きいはど体内の血管内皮はリアルタイムで傷つけられ、将来の動脈硬化や心筋梗塞のリスクとなります。

グラフに表すと非常にわかりやすいのですが、早朝の空腹時血糖値は88mg/dlですが、通常の糖尿病食で食パン2枚を食べた2時間後には321に跳ね上がっており、233も上昇しています。

血糖値の正常値は、空腹時で110未満、食後2時間で140未満なので、この方の食後血糖値が急激に上昇していることがわかります。

このような人は、普通の健康診断では空腹時血糖値だけを検査して正常と見なされてしまいますから、注意が必要です。一方、糖質制限食ならまったくスパイクなしです。

また、正常人でも、白米や白いパンなど精製された炭水化物を1人前食べると、食後血糖値は60〜70も上昇することがあります。これを「ブドウ糖ミニスパイク」とも呼ばれています。

糖尿病患者におけるブドウ糖スパイクはど大きな変動はないものの、人体に少なからず害を与えている可能性が高いのは間違いありません。

むしろこのミニスパイクこそが、肥満やメタボ、そして生活習慣病の元凶と考えるべきでしょう。例えば、正常人が精製炭水化物を食べた場合と、未精製の炭水化物を食べた場合を比べると、血糖値の上がり方は明らかに違います。

また、脂質・タンパク質を摂っても血糖値は上がりません。

正常人の女子大生が白米1人前を食べたときの血糖値と、焼き肉1人前を食べたときの血糖値を比べると、白米のときは、空腹時1 0 0 mg/dlから食後1時間で1 6 5まで上昇してミニスパイクを起こしていますが、焼き肉のときはまったくスパイクなしです。

ここで重要なのは、1日に何回も糖質を摂ると、そのたびにミニスパイクが起きるということです。そして、ミニスパイクのたびにインスリンが大量に追加分泌されて、代謝が乱れます。基礎分泌の数倍から30倍ものインスリンが追加分泌されますから、人体にとっては救急車の出動に等しい緊急事態といえるでしょう。

血糖値が180を超えるとリアルタイムで血管内皮が傷つけられるので、すい臓のβ 細胞はこの緊急事態を何とかおさめようと一生懸命にインスリンを分泌するわけです。現代人は離乳後、1日3〜5回も精製炭水化物を摂り、体内でブドウ糖ミニスパイクを起こしています。

そのたびに代謝は乱れ、自然治癒力は浪費され、すい臓のβ 細胞は疲れていきます。こうしたミニスパイクとインスリン追加分泌の積み重ねが人体をかく乱して、アレルギー性疾患や生活習慣病の根本要因となっています。このようなことを40〜50年もくり返せば、β細胞は疲れきってインスリンの分泌能力が低下し、糖尿病にもなります。

近年のジャンクフードの増加は、こうした状況にさらに拍車をかけています。精製されていない玄米などなら、1人前食べても正常人だと40くらいまでしか血糖値を上げず、ミニスパイクが生じないので代謝が安定します。

しかし、残念ながら糖尿病になってしまったら、玄米でも150以上のスパイクを起こしてしまうので、糖質制限食が必要となるのです。糖質制限食なら、血糖値の上下動は正常人でははとんどなくなり、糖尿人でも大幅に少なくなります。

健康のカギを握るインスリンの役割とは?

それでは、なぜ食後血糖上昇とインスリンの過剰分泌がさまざまな病気や症状を引き起こすのでしょうか?

それを説明するために、まずはインスリンの役割について簡単に触れておきます。糖尿人はよくご存じでしょうが、インスリンはすい臓のランゲルハンス島という部分にあるβ 細胞でつくられている物質で、血液中のブドウ糖の量(血糖値)を調整するのが主な役割です。

体内で唯一、血糖値を下げる働きをしています。インスリンには24時間継続して少量出続けている「基礎分泌」と、糖質を摂って一時的に血糖値が上がったときに出る「追加分泌」の2種類があります。

これでわかるのは、何も食べていないときでも、人体には少量のインスリンが必要ということです。このインスリンの基礎分泌がなくなると、人体のはとんどの組織ではネルギ一代謝がまともに行えなくなってしまいます。

そして、食事などで糖質を摂ると、血液中のブドウ糖の量が増えるので、インスリンも増やさなければなりません。そのためにインスリンを余計に分泌することを追加分泌と呼びます。

追加分泌されたインスリンは、血液中のブドウ糖を骨格筋や心筋などの細胞内に取り込み、エネルギー源として使えるようにします。またインスリンは、血液中の余分なブドウ糖を体脂肪に変える働きもしています。

一方でブドウ糖を燃やし、他方でブドウ糖を体脂肪に変えることで、インスリンは血液中のブドウ糖の量を減らすのです。そして追加分泌のインスリンには、すぐに分泌されるものと、少し遅れて出るものがあります。正常な人は、血糖値が上昇しはじめると、即インスリンが追加分泌されます。

これは第1相反応と呼ばれ、もともと蓄えられていたインスリンが5〜10分間分泌されて、糖質を摂ったときの高血糖を防いでいます。

そのあと少し遅れて、第2相反応と呼ばれるやや少なめの、持続するインスリン分泌を行います。これが食事を摂ったときの糖質の残りをカバーしています。つまり、糖質を摂っている間は、第2相のインスリン分泌が持続します。食事が終わってしばらくすると、また第1相のインスリンが蓄えられるわけです。

このようにインスリンは、生きていくために欠かせないホルモンで、その分泌を担っているのがすい臓のβ 細胞なのです。

糖尿病というのは、このインスリンの作用不足によって血糖値が高くなる病気です。なお、糖尿病には1型と2型があります。1型糖尿病は、ウイルス感染などをきっかけに免疫の誤作動が生じ、すい臓のβ 細胞が破壊され、インスリン分泌が枯渇して発症するものです。

小児期に起こることが多いため、小児糖尿病とも呼ばれます。

2型糖尿病は、インスリン分泌低下とインスリン抵抗性の2 つの要因により、結果としてインスリンの作用不足となって発症するものです。インスリン抵抗性とは、肥満などの要因でインスリンの効きが悪くなることです。この2型糖尿病は遺伝的因子と生活習慣がからみあって発症する生活習慣病で、日本の糖尿病の95% 以上を占めています。