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英国の「ヒューマン・ニュートリション」が教えること

現代ではご飯やパンなどの穀物が主食となっており、それを誰もが当たり前に食べています。しかし、これもまた当たり前なのですが、農耕が始まる前の人類の主食は決して穀物ではありませんでした。

英国の栄養学の本に『ヒューマン・ニェートリション』という名著があります。日本語に訳すと「人間栄養学」という意味で、発行以来10版を重ねています。この本の日本語版75ページに次のような記述があります。

「現代の食事では、…デンプンや遊離糖に由来する『利用されやすいブドウ糖』を大量に摂取するようになっている。このような食事内容は血糖およびインスリン値の定期的な上昇をもたらし、糖尿病、冠状動脈疾患、がん、老化等、多くの点で健康に有害であることが強く指摘されている。農業の発明以来、ヒトは穀物をベースとした食物を摂取するようになったが、進化に要する時間の尺度は長く、ヒトの消化管はまだ穀物ベースの食物に適応していない。ましてや高度に加工された現代の食物に対して、到底適応しきれてないのである」

人類の本来の主食は穀物ではないし、まだまだ穀物ベースの食物に適応できていないと明記されています。

「ヒューマン・ニュートリション」では、穀物の過剰摂取の害、とくに精製炭水化物による「血糖およびインスリン値の定期的な上昇」が多くの点で健康に有害と強調しています。

これは私が日頃から主張している「精製炭水化物の摂りすぎによる食後血糖上昇とインスリンの過剰分泌が生活習慣病の元凶になっている」という説と、まったく同じと言っていいと思います。

なお、炭水化物と糖質はよく混同されて使われますが、「炭水化物=糖質+食物繊維」です。食物繊維は体内に吸収されないので、カロリーもゼロで、血糖値も上げません。カウントすべきは糖質のみと覚えておいてください。

「糖質制限食」どんな食事療法なのか?

現在、糖尿病の関連の専門家の間では、食後高血糖が大きな問題として注目されています。従来は空腹時血糖をコントロールしてきたのですが、それだけでは不充分で、食後血糖をできるだけ低くおさえることが大切だというのです。

その理由は、食後高血糖が心筋硬塞や脳梗塞などの合併症を引き起こす危険因子として確立されたからです。

ところが、日本で常識とされている糖尿病の食事療法は、こうした実態に応えられるものになっていません。カロリー制限を重視した炭水化物(糖質) 中心の糖尿病食というのは、血糖値をおさえるどころか、むしろ上昇させてしまうからです。

米国糖尿病協会(ADA) によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、脂質とタンパク質は血糖に変わりませんが、糖質は100% 血糖に変わります。

また糖質は、摂取直後から血糖値を急上昇させて、2時間以内にはとんどすべてが体内に吸収されてしまいます。これらは食べ物に含まれるカロリーとは無関係の生理学的な特質です。

このように、糖質・脂質・タンパク質の3大栄養素のうち、血糖値を上げるのは糖質だけなのです。糖質を摂ると、血液中のブドウ糖(血糖)をエネルギーに変えようとして、インスリンが大量に追加分泌されます。

食物グループ 栄養素 血液に与える影響 影響の速度
でんぷん
( 米、小麦粉、芋類など)
糖質
たんぱく質
大きい 速い
牛乳
(甘いものを含む)
糖質
たんぱく質
大きい 速い
野菜 糖質
たんぱく質
小さい 速い
たんぱく質
脂質
脂質 脂質

インスリンは生きていくのに欠かせない大切なものですが、別名「肥満ホルモン」とも呼ばれるように、多く出すぎると体に悪い影響を与えてしまいます。

そして実は、正常な人においても、この糖質の摂取がもたらす食後血糖上昇とインスリン大量追加分泌のくり返しが、糖尿病・肥満・メタボ、さらにはさまざまな生活習慣病の根本要因になっている可能性が高いのです。

糖質制限食の基本的な考え方は、このような生理学的な特質をもとに、できるだけ糖質の摂取をおさえて、食後血糖上昇とインスリンの過剰分泌を防ぐというものです。

簡単にいえば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。抜く必要がある主食とは、米飯・パン・めん類などの米・麦製品や、ジャガイモ・サツマイモ・里イモなどのイモ類など、糖質が主成分のものです。

もちろん糖質制限ですから、甘いお菓子やジュースもNG です。それさえ注意すれば、肉や魚はお腹いっぱい食べられます。

焼酎やウイスキーなどの蒸留酒なら、お酒を飲んでも構いません。具体的な実践法についてはここでは3 つのやり方があることを覚えておいてください。

  1. 「スーパー糖質制限食」朝・昼・夕とも主食なし。
  2. 「スタンダード糖質制限食」1日3食のうち1回の食事だけは主食を摂り、残りの2回については主食を抜きます。
  3. 「プチ糖質制限食」夕食だけ糖質の多い食品を避けます。

一番のお勧めは効果抜群の「スーパー糖質制限食」ですが、病気や症状によって使い分けるのが望ましいです。

食習慣を変えることが健康ダイエットへの近道

現代人の食生活は、体に相応しいものなのでしょうか?と実は、現代人が毎日摂っている食べ物は、人類本来の食生活とはかけ離れたものになっています。そして、その事突こそが、さまざまな生活習慣病がこれだけ増えたことの根本要因なのです。

いまの食生活を、人類本来の食生活である糖質制限食に変えることで、私たちは簡単に健康を手に入れることができるのです。

糖尿病などなどは、まず食事療法(糖質制限食) だけで症状の改善を目指します。それだけではうまくいかないときに、初めて薬の内服を考えます。

日本人は薬好きで有名な民族ですが、多くの生活習慣病が薬なしの糖質制限食のみで改善します。

実は、栄養士や医師が推奨するカロリー制限食(糖質60% 、脂質20% 、タンパク質20% ) は、人類本来の食生活からみると最悪のバランスなのです。それでは、「人類にとって最高のバランスの糖質制限食」とは、いったいどのような食事療法なのでしょうか?