現在、糖尿病の関連の専門家の間では、食後高血糖が大きな問題として注目されています。従来は空腹時血糖をコントロールしてきたのですが、それだけでは不充分で、食後血糖をできるだけ低くおさえることが大切だというのです。
その理由は、食後高血糖が心筋硬塞や脳梗塞などの合併症を引き起こす危険因子として確立されたからです。
ところが、日本で常識とされている糖尿病の食事療法は、こうした実態に応えられるものになっていません。カロリー制限を重視した炭水化物(糖質) 中心の糖尿病食というのは、血糖値をおさえるどころか、むしろ上昇させてしまうからです。
米国糖尿病協会(ADA) によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、脂質とタンパク質は血糖に変わりませんが、糖質は100% 血糖に変わります。
また糖質は、摂取直後から血糖値を急上昇させて、2時間以内にはとんどすべてが体内に吸収されてしまいます。これらは食べ物に含まれるカロリーとは無関係の生理学的な特質です。
このように、糖質・脂質・タンパク質の3大栄養素のうち、血糖値を上げるのは糖質だけなのです。糖質を摂ると、血液中のブドウ糖(血糖)をエネルギーに変えようとして、インスリンが大量に追加分泌されます。
食物グループ | 栄養素 | 血液に与える影響 | 影響の速度 |
でんぷん ( 米、小麦粉、芋類など) |
糖質 たんぱく質 |
大きい | 速い |
牛乳 (甘いものを含む) |
糖質 たんぱく質 |
大きい | 速い |
野菜 | 糖質 たんぱく質 |
小さい | 速い |
肉 | たんぱく質 脂質 |
— | — |
脂質 | 脂質 | — | — |
インスリンは生きていくのに欠かせない大切なものですが、別名「肥満ホルモン」とも呼ばれるように、多く出すぎると体に悪い影響を与えてしまいます。
そして実は、正常な人においても、この糖質の摂取がもたらす食後血糖上昇とインスリン大量追加分泌のくり返しが、糖尿病・肥満・メタボ、さらにはさまざまな生活習慣病の根本要因になっている可能性が高いのです。
糖質制限食の基本的な考え方は、このような生理学的な特質をもとに、できるだけ糖質の摂取をおさえて、食後血糖上昇とインスリンの過剰分泌を防ぐというものです。
簡単にいえば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。抜く必要がある主食とは、米飯・パン・めん類などの米・麦製品や、ジャガイモ・サツマイモ・里イモなどのイモ類など、糖質が主成分のものです。
もちろん糖質制限ですから、甘いお菓子やジュースもNG です。それさえ注意すれば、肉や魚はお腹いっぱい食べられます。
焼酎やウイスキーなどの蒸留酒なら、お酒を飲んでも構いません。具体的な実践法についてはここでは3 つのやり方があることを覚えておいてください。
- 「スーパー糖質制限食」朝・昼・夕とも主食なし。
- 「スタンダード糖質制限食」1日3食のうち1回の食事だけは主食を摂り、残りの2回については主食を抜きます。
- 「プチ糖質制限食」夕食だけ糖質の多い食品を避けます。
一番のお勧めは効果抜群の「スーパー糖質制限食」ですが、病気や症状によって使い分けるのが望ましいです。