未分類

糖質制限食はアルツハイマーにも効果があるかもしれない

糖尿病があるとアルツハイマー病になりやすいことが、過去のいくつもの研究で明らかになっています。

とくに、外部からのインスリン注射がアルツハイマー病のハイリスクになるということと、高インスリン血症がアルツハイマー病のリスクになることが確認されています。

高インスリン血症というのは、血液中のインスリンが常に高い状態で、これが長く続くと糖尿病や動脈硬化などを引き起こします。糖尿病とアルツハイマー病の関連を示す研究をいくつか紹介しましょう。

1.九州大学清原裕教授らの久山町研究
1985年時点で認知症のなかった65歳以上の8 26人を15年間にわたって追跡調査したところ、糖尿病やその予備軍の人は、アルツハイマー病を発症するリスクが4・6倍高いことが報告されました。
2.ロッテルタム研究
高齢の糖尿病患者が脳血管性認知症を発症する相対危険度は2・0倍、アルツハイマー型認知症の危険度は1.9倍高いことが示されました。さらに、インスリン治療を受けている糖尿病患者は発症リスクが4.3倍となりました。
3.J・ジャンソン博士らの研究
アルツハイマー病患者の約80% に2型糖尿病あるいは耐糖能低下(ブドウ糖をエネルギーに変換する能力が低下すること) がみられることが報告されました。
4.神戸新聞200 8年1月8日
加古川市内の病院に勤務する医師らの臨床研究により、糖尿病の通院患者の半数以上にアルツハイマー病の初期症状がみられることがわかりました。
5.神戸大学横野浩一教授の研究
肝臓などにあるインスリン分解酵素は、末梢血液中のβ アミロイド(アルツハイマー病を引き起こすとされる物質) を分解することが知られています。ところが高インスリン血症の場合は、この酵素がβ アミロイドとインスリンをどちらも分解しようとするため、β アミロイドが血液中に残りやすく、アルツハイマー病のリスクとなることが指摘されました。

これらの研究から、糖尿病があるとアルツハイマー病になりやすいこと、なかでもインスリン使用者の発症リスクが高いことは間違いないようです。また2と5 を考え合わせると、外部からの注射であろうと体内での分泌であろうと高インスリン血症の人は、アルツハイマー病を引き起こすとされるβ アミロイドが血液中に残りやすくなるため、アルツハイマー病になりやすいといえそうです。

では、高血糖そのものによる代謝異常と認知症の関係はどうなのでしょう?この間題に関しては、2のロッテルダム研究が参考になります。糖尿病がある高齢者は、脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の危険度が約2倍なので、両タイプの認知症に同等になりやすいといえます。

一方、ことアルツハイマー型認知症に関しては、インスリン使用者の危険度は4.3倍ですから、インスリンおよびインスリン分解酵素が大きく関与しているようです。えきがくコントロール良好の糖尿病でどうなのかは、疫学調査がないのでよくわかりません。しかし他の合併症と同じように、糖尿病のコントロールが良好ならアルツハイマー病にもなりにくいと予想されます。

また、糖質制限食なら人体の代謝すべてが改善しますから、当然、脳細胞の代謝もよくなり、アルツハイマー病予防にも有効だと思います。

アルツハイマー病についてはこちら。

主食が穀物ではなかった証拠1「インクレチンの効力」

現代人が穀物に依存するような遺伝子を備えていないということは、人体の仕組みを見れば理解しやすいと思います。

「DPP- 4阻害剤」という糖尿病の薬が日本でも健康保険で使えるようになり、2009年12月から発売されました。この薬は「インクレチン」というホルモンを血中にとどめる作用があります。

インクレチンとは、小腸から分泌されるホルモンで、血糖値が正常のときはインスリン分泌を促進させず、食後高血糖のときだけインスリン分泌を促進させるので、低血糖も起こしにくいのです。

まことに都合のいいホルモンですが、残念なことにDPP-4酵素によって速やかに分解されてしまうため、血中の半減期が約2分と非常に短いのです。

この酵素の働きを阻害してやれば、インクレチンは血中にとどまり、およそ24時間近くも血糖降下作用を発揮してくれることになります。

ここで根源的な疑問が湧いてきます。なぜ、このような都合のいいホルモンが、血中でわずか2分で分解されて効果を失ってしまうのでしょうか?考えられる一番シンプルな推測は、人類の進化の過程でインクレチンは食後2分くらい働けばもう充分で、あとは消え去るのみだったということでしょう。農耕が始まる前の700万年間は、日常的な血糖値の上昇がはとんどなかったのですから、インクレチンが何時間も働かなくてはならない必然性はありません。

当時の食生活でいえば、日常的には野草・野≠采、たまにナッツや果物などの糖質を摂ったときに血糖値が少し上昇するので、インクレチンはそれに対応していたものと考えられます。

そうだとすれば、食後2分間働けば充分です。農耕が始まり、食後高血糖が日常的に生じるようになったあとは、インクレチンにおおいに活躍してはしいところです。

しかし、いかんせん700万年間の進化の重みは大きくて、DPP-4が律儀にすぐ分解してしまうクセがついているのです。

人類の歴史を考えれば穀物が主食になった期間はごく短いので、それに対応できるような突然変異は生じなかったのでしょう。インクレチンが約2分間で分解されるという生理学的な特質は、人類の主食が長らく穀物(糖質) ではなかったことの証拠といえるでしょう。

食前・食後血糖値の変化からみる人類の食生活

約700万年間の人類の歴史のうち、穀物を主食としたのは、農川研が始まってからの約1万年間にすぎません。

それまではすべての人類が糖質制限食を実践していました。これはすでに紹介しましたが、私たちの食生活を考えるうえで非常に大事なことなので、少し掘り下げて考えてみましょう。

人類の食生活は「農耕が始まる前」「農耕以後」「精製炭水化物以後」の3つに分けることができます。

この3 つの変化がきわめて重要な意味を持っているので、それ以外のことはすべて枝葉末節と言い切ってもよいくらいです。

その重要な意味というのは、血糖値の変化です。血糖値を切り口にして人類の食生活を考えてみると、…鮮明な変化が見えてきます。

人類の歴史のうち農耕が始まる前の約700万年間は、食生活の中心は狩猟や採集でした。米や小麦などの穀物は手に入らなかったので、誰もが糖質制限食を実践していたといえます。このような糖質の少ない食生活なら、血糖値の上下動ははとんどありません。

例えば、空腹時血糖値が100mg/dl舶程度とすると、食後血糖値はせいぜい110~120くらいで、上昇の幅は10〜20程度の少なさです。

これならインスリンの追加分泌ははとんど必要ありません。次に、農耕が始まったのが約1 万年前です。人類は狩猟民から農耕民になったとき、単位面積あたりで養える人口が50〜60倍にも増えました。しかし、収穫した穀物を食べると血糖値が急上昇します。空腹時血糖値が100mg/dlとして、食後血糖値は140くらいで、上昇の幅は40もあります。

穀物を食べるたびに血糖値が上昇してインスリンが大量に追加分泌されますから、農耕以後の1 万年間は、すい臓のベータβ細胞はそれ以前に比べて毎日10倍以上働き続けなくてはならなくなったのです。

さらに、18世紀に欧米で小麦の精製技術が発明されます。白いパンの登場です。日本では江戸中期に白米を食べる習慣が定着していきます。すなわち、ここ200~300年間、世界で精製された炭水化物が摂取されるようになりました。

現代では、少なくとも文明国の主は白いパンか白米です。精製炭水化物は未精製のものに比べて、さらに血糖値を上昇させます。空腹時血糖値が100 喝として、食後血糖値は160〜170くらいで、上昇の幅は60〜70もあります。

こうなると、インスリンはさらに大量に追加分泌されます。頻回・大量分泌が長期におよび、すい臓のβ 細胞が疲れきってしまえば糖尿病にもなります。インスリンの分泌能力が高い人は、さらに出し続けて肥満になります。

健康を維持するには、恒常性を保つことが重要です。人類の食前・食後血糖値の恒常性は約700万年間保たれていましたが、農耕開始後の約1万年間は上昇幅が2倍になり、精製炭水化物を摂るようになった約200年間は3倍になり、分泌せざるをえなくなりました。